99.5.16
日本の味

1973年の秋の事である。FMラジオを聴いていて耳が釘づけになってしまった音楽がマッコイ・タイナーがその年発表したアルバム、Song Of The New World*1であった。彼の名前を知ったのはその時であり、その番組のNew Disc紹介で彼のアレンジメントによる初のビッグバンド形式(というよりはストリングスを加えたブラスアンサンブルか?)のアルバムであることを知った。なによりも「おやっ」と思ったのは「The Divine Love」という曲で聴こえた日本音楽的な音階、D-F-G-A-C-D(尺八の全孔開時の音)である。もちろん、EやBもところどころ入ってくるのだが、一瞬「追い分け」に聴こえたのである。
マッコイ・タイナーが過去にどういう音楽を聴いていたか定かではないが、日本人以外が「日本」あるいは「東洋」をイメージして創作した音楽には我々日本人には奇妙に聴こえるようなものもある。この曲もなんとなく中華風味な気がしないではないが、日本人の創作によるものや邦楽器で演奏された音楽以上に日本の味を感じてしまった理由はなんだったのだろうか?EやBが隠し味のようになってD-F-G-A-C-Dを浮き立たせたような気もする。 それは異国で外国人向け味付けの日本料理店で食べた梅干しと言ったらよいだろうか?
この体験がそれまで北アメリカのロック、フォーク、ブルーグラス、マウンテンミュージックに夢中になっていた私の興味を一気に日本音楽に向かわせてしまったのであった。

*1:"SONG OF THE NEW WORLD"

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