2019.12.7
楽曲エッセイ:
Highwayman/Johnny Cash、Kris Kristofferson, Waylon Jennings、Willie Nelson 輪廻転生

 "Highwayman" はカントリーミュージック界の大物4人がコラボレートして1985年にリリースした同名タイトルのアルバム*1に収録。
この4人だが、いずれもくせ者揃いである。保守的なカントリーの枠からはみ出し、ナッシュビルに反旗を翻すアウトロー達。
ジョニー・キャッシュはアーカンソー州出身だが、他の3人はテキサス州出身なので、カントリーの故郷である東南部アパラチアン山脈地域からかなり離れている。ウェスタンやメキシカン、そして60年代から賑わい始めたカリフォルニアの音楽シーンの影響を受けたのも頷ける。
ウィキペディアによると、Highwayman とは中世の時代から街道に出没する追い剥ぎの事で、アメリカでは西部開拓時代に馬で移動しながら駅馬車や鉄道を狙った窃盗団を指すとのこと。彼らにふさわしいナンバーである。
彼らはロカビリー、ロックンロール、フォークミュージックといったジャンルとクロスオーバーする部分もあり、そうした若いミュージシャン達から人望も尊敬も集めている。4人は映画俳優としての経験もあり、ウィリー・ネルソンはギタリストとしても認知されている。
 この曲がユニークなのは輪廻転生を題材にしているところである。アメリカは多民族、多宗教国家であり、東洋思想の信者も少なくないが、作者であるシンガーソングライター、Jimmy Webbが自分の見た夢を基に書き起こしたとのこと。
4人の男が自分が死んだ経緯を語っていくのだが、いずれも労働者の立場であるところはカントリーのマナーに則っているかもしれない。
ただ、四番目に歌うジョニー・キャッシュは宇宙船を操ってきたと言い、労働者というイメージでは無い。但し、一番に登場するウィリー・ネルソンは時代が追いはぎが出没した17世紀頃、二番目のクリス・クリストファソンは帆船時代、三番目のウェイロン・ジェニングスは現代となっているので、未来の宇宙飛行士はブルーカラーという予言、あるいは宇宙海賊なのかもしれない。
作者のJimmy Webbはオクラホマ州出身の1946年8月15日生まれで、フィフス・ディメンションのUp, Up and Awayの作者としても知られている。オリジナルは自身の初アルバムで1977に発表されているが、ギターでコード進行を探って曲を作って行くいわゆるシンガーソングライターというより、ピアノで曲を作る一世代前の契約作曲家に近そうだ。4人組のバージョンはどこか映画音楽という色合いを感じる。


Highwayman

俺は追い剥ぎだった。
馬車の通る道で待ちかまえ
サーベルとピストルを両脇に携え
娘からは宝石を巻き上げ
兵士は俺の刃の露と化した
だが、やつらに吊るされたのは俺が25歳の春だった
でも、俺はまだ生きている

俺は船乗りだった
海原で生まれ、暮らしてきた
帆船でメキシコ沿岸を巡り
風に逆らって帆柱のてっぺんで帆を巻き上げているとき
そこで死を宣告されたのさ
でも、俺はまだ生きている

俺はダムを造ってきた
深く、広い川を相手に
鋼と水がぶつかり合う
コロラドのボウルダーって処だ
俺は足を踏み外して固まっていないコンクリートの中に落ちたのさ
それが俺の巨大な墓だなんて誰も知るまい
でも、俺はまだ生きている

俺は宇宙船で宇宙を巡ってきた
俺があの世に着いたと思ったとき
これで魂を休める場所が見つかったと思った
でも俺はまた追い剥ぎに戻るんだろうな
ただの雨のひと滴のように
俺はまだ生きている
何度でも戻ってくるさ
何度でも

written by Jimmy Layne Webb

*1

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