2000.7.22
ひぐらしとマンドリン

七月の中旬、まだ空が明るい夕方七時頃、ことしもひぐらしの初鳴きが聴こえた。 カナカナカナという音色は色々な思い出を運んでくれる。昔の人はこの音色を聴いて何を思っただろうか? 終戦後、進駐してきた米軍兵たちは、恐らく初めてこの音色を耳にしたのではないだろうか?戦争が終わったという安堵感と望郷の思いでいっぱいの彼等の胸に、カナカナはどういうふうに染込んで行っただろうか?
私の友人が、カントリー系の音楽を聴いていて、「このカナカナマンドリンは胸にしみるねえ。」と言うのを聞いて、なるほどうまいことを言うもんだと感心した覚えがある。そのマンドリンは間奏でカントリーにはちょっと珍しく湿っぽく、郷愁をさそうように、そう、まさに忍び寄ってくるように入ってくるのであった。
日本は虫の音を愛でる文化であり・・・・というような事をしばしば聞いたり、眼にする度に、日本人でなくたって・・・・・という疑問が湧いてくるのだが。このマンドリンプレーヤーはひぐらしの声を聴いたらきっとなにかが胸に満ちて行く人じゃないかな。と思った次第である。

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