2001.4.4
Roy Haleeのこと

友人のサイトの掲示板でサイモン&ガーファンクル(S&G)のボクサーの事が話題に登ったので思い出したこと。
ボクサーは70年に発表されたアルバム「明日に架ける橋」*1に収められているのだが、先立って69年にシングルヒットした曲で、 わたしにとっては思い出深く、かつバイブルのような曲でもある。
イントロのギターのアルペジオ、デュエットのハーモニー、バスハーモニカ、ドブロギター、クライマックスのライラライ〜〜の大多重コーラス(S&G2人で6回ぐらい重ねている)とストリングス。そしてエンディングで一人残るギターのアルペジオ等等、おいしいところがいっぱいで、どれをとっても心にぐっときた。
そしていまだに解明できないのが間奏のソロを奏する楽器がなんだったのか?ラジオで聴いた当時はトランペットだと思っていたのだが、後年、ヘッドフォーンでよく聴いてみるとサステインをかなり効かせたギターにも聞こえる、もしかしたらペダルスティールギターなのかもしれない。
そしてダーンという、あたかもドラム缶を地下道で叩いたようなパーカッションにかけたリバーブ処理が独特だった。S&Gはニューヨークが本拠地で、ポールサイモンもニューヨークを描写した歌詞が多かったのだが「地下道のドラム缶」もニューヨークの地下鉄の構内というか、都会の薄暗い部分をイメージさせられたものだ。
それほど豊かなイメージを具現化したのは誰だったのか?アルバムジャケットの裏にエンジニアRoy Haleeとクレジットされているのを見つけたのはおよそ15年後のことである。もしかしたら、あのアルバムも彼が?と思って探したら、同じくS&Gの「ブックエンド」*2や同時代のTHE BYRDSの「名うてのバード兄弟」*3というアルバムジャケットにも彼の名を見つけることができた。彼の仕事ぶりは本当に見事だと思う。
ついでにボクサーの歌詞の方は恐らくは大恐慌の時代、田舎から仕事を探してニューヨークに出てきた貧しい少年がリングで打ちのめされるまでを回想した内容で、同じボクサーでもアリスの「チャンピオン」とはまた違った視点だ。その時代の社会の断片を切り取るというフォークソングのひとつのフォーマットが感じられるところが嬉しい。

*1:"BRIDGE OVER TROUBLED WATER" 1970

*2:"BOOK END" 1968

*3:"NOTORIOUS BYRD BROTHERS" 1967

後日談:
その後、Roy Haleeで検察していたところ、ボクサーの間奏のソロ楽器についての彼のインタビュー記事が見つかった。それによるとコロンビア大学の教会で録音したピッコロ・トランペットとナシュビルで録音したペダルスティールギターをオーバーダビングしたものだそうだ。こちら
左チャンネルにトランペット、右チャンネルにペダルスティールを配しており、どちらもアタックの部分が弱いので同じ楽器のように聞こえるのだが、微妙に減衰時間が違うのでちょっと不思議な音に聴こえるのである。彼はこの世界に入る前はクラシックのトランペッターになるべく勉強していたそうで、なるほど経験というものは有り難いものである。
また上述の「地下道のドラム缶」はエレベータースネアを使ったそうである。
以上、2009.12.6加筆

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