98.3.28
ローカルロマンティシズム

 自分は旅をするなら、色々な土地を巡るより、同じ土地を何度も訪れたい性分である。多摩川の水を飲んで育ったせいか、山歩きは結局多摩川水系の内側ばかりである。分水嶺を越えて、別の水系に足を踏み入れるとなぜか気持ちが落ち着かなく、早く多摩川水系に戻りたい気持ちにかられる。街に居ると、山歩きの途中で出会った地元のあのお爺さんは今頃どうしているだろうか?、骨と皮になった鹿の屍はもう土に還っただろうか?と思うとまたそこに出かけたくなる。地球から宇宙の果てを想像するのもそうだが、宇宙の果てからあのお爺さんや鹿の屍のようにローカルなものを想像することもとても浪漫だと思う。スペースシャトルから地球を見下ろすことができるならきっとそうするだろう。

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