2004.5.5
食べ処とBGM

 家のそばにイタ飯屋さんが店開きしたので試食にでかけた。 と言ってもオーナーが変わっただけで、以前もイタ飯屋さんだったが。
毎度のことながらこうしたお店に入り、まず腰を落ち着かせてオーダーを終える頃合になるとBGMが耳に入ってくる。 いつの頃からか?、こうした小洒落たお店では判で押したようにソプラノ、アルトサックスの音色が流れてくる。と感じるのは私だけだろうか? 音楽自体を聴くのではないので、料理がまずくならなければまあまりこだわらないほうではあるが。
でも、オーナーのこだわりの音楽を流すお店で食べるのは、それが自分の好みの音楽ではなくとも、とても楽しいものである。しかしそのようなお店に巡り会える機会はざらにない。 オーナーの方も音楽が「解る」お客さんの来店を楽しみにしているのではないだろうか? 「この曲は誰それの××ですね」と言ってあげればオーナーの頬が微かに緩むのが楽しい。
ところで、民族色を打ち出した料理屋さんではその国の民族音楽をBGMとして使うのはよく見かける。 インドカレー屋さんではシタールが、ステーキ屋さんではフィドルが、中華料理屋さんでは二胡が、流れてきたりする。
ところが、和食屋さんで箏が聞こえてくるとどこかしっくりこない。なにか自分の通信簿を見ながら食事をしているような感じである。
以前、北米はニュージャージー州の和食屋さんに昼飯を食べに行ったときのこと、聞くところによるとここは日本人がオーナーでは無いとのこと、米国人が作務衣風の服を着て給仕していた。 ここでは尺八本曲が流れていたが、さすがにこれだけは食事どころでは無くなってしまった。 でも、ここのオーナーには「いくら和食屋さんでも尺八本曲はBGMにはちょっと・・・」と進言するつもりは毛頭無い。 それは米国人には舌も耳も美味しく頂けるのかもしれないから。
自国の民族音楽というのは食べ処のBGMには向いていないのだろうか?

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