2009.9.27
アニメ作品とオーケストラ作品

 数日前の新聞にこんな記事が載っていた。
アニメの原画を一枚一枚描いてゆくのは素養と根気と集中力と時間を要する大変な作業なのに、アニメータの収入は他の職業に比べ格段に低く、ワーキングプアだとのこと。
そこですぐ頭に浮かんだのがオーケストラの団員のことである。○○フィルハーモニーオーケストラと名のつくプロのオケは日本にもいくつかあるが、楽団員一人一人に支払われる報酬だけではとても生活してゆけるものではないと聞く。オケに所属する演奏家の多くはアマチュア向けに楽器教室を開いたり、アマチュアオーケストラの指導などで生計を立てていると聞く。あの大人数を考えれば、団員一人当たりの報酬は想像がつく。
楽団員は日々稽古を重ね、次回の演奏会に備えて自宅で何時間も練習し、そういう4〜50人が同じ時刻に一同に集結するわけである。リハーサルのために大きな会場を確保するにも資金が必要になる。それほど大掛かりな事なのである。
そんな世界であるから、新しいオーケストラ作品の中で実際に演奏されるものは氷山の一角で、ほとんどの作品は楽譜のままで一度も聴衆の前で演奏されることなく眠っていると聞く。

新聞記事には、いつか自作のアニメ作品を世に問いたいという夢を持ちながらアニメータを続けている人の事も出ていた。
大掛かりで人件費が掛かるという面ではアニメ作品を創出することはオーケストラ作品を創出することと似ている。 一つの作品を世に送り出す為に何年間も費やして自分ひとりで原画を描くというアニメ創作家も居るかもしれない。そのような彼、又は彼女はなにか別の仕事で生計を立てるのであろう。
少ない報酬にもかかわらず、あのようにオーケストラ団員が集まるというのはそれ相応のモチベーションがあるからだろう。アニメ作品にアニメータとして参加するときのモチベーションとはどんなものなのだろうか?
仕事の大変さに対する収入の多少だけでワーキングプアと呼ぶのに少し引っかかった次第である。

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