2010.5.28
親子二代の机

 先日、子供の小学校の授業参観があった。
授業参観や運動会などの行事は欠かさず出かけることにしているのだが、私が通っていた母校なので懐かしさゆえである。早いもので今年は6年生なので、授業参観も残すところあと二回となった。自分が6年生だったのは今から43年前のことであるが、教室は耐震のための補強の梁が追加されている以外はほとんど昔のままである。変わったのはダルマストーブが無くなった事と、少子化で当時45人5クラスが現在は35人4〜3クラスに激減したことぐらいだろうか。当時の教室に入って自分が壁に描いたいたずら描きを探してみたが消されてもう無かった。
 子供が5年生の3学期の授業参観で初めて音楽の授業を参観したのだが、音楽室が当時のままだったのが嬉しかった。最上階の3階にあり、校舎の南東側の角なので2方向が見晴らしが良く、町並みや遠くの多摩川が見渡せる。そのとき、「あれっ」と思ったのが机である。歌う時の自分の口の形を見るための鏡が付属した楽譜立てを差し込む細長い穴と、縦笛を置く窪みに見覚えがある。あらゆる角が擦れて丸みがついてかなり年季が入っているので、まさかこれは私達が使ったあの机ではないだろうか? 
 その参観日の際はあまり観察する時間が無かったのだが、先日の参観日もまた運良く音楽の時間があったので、今度は詳しく調べてみることにした。1時限目だったので生徒がやってくる前に音楽室に入ると音楽の先生がすでに待機されていたので伺ってみた。「ずいぶん年季が入った机ですね。」「そうなんです、合板ではなくてこんな一枚物の木で出来た机は今は珍しいんですよ」とのこと。机の中や裏側や脚に製造年月か購入年月のシールでも貼ってないかと探したのだが、残念ながら見当たらなかった。
 授業が始まったので教室の隅の方で今度は備品のビブラフォンの調査にかかった。これも机と同様、あらゆる角が丸くすり減っている。ビブラートを掛けるための鉄琴の下でぐるぐる廻る団扇を駆動するモーターは健在だが、プーリーに掛かったスプリング製のベルトが弛んでスリップしそうなほどくたびれている。がっ、製造年月日のシールが見つかった! 昭和39年斉藤楽器製作所製とある。これは私が3年生の時である。東京オリンピックで、たしか木造から鉄筋の新校舎に建て直した頃である。恐らく新音楽室落成で教材や備品をその時に新調したのだろう。
 ということで、机もまず私が落書きしたものに間違いないだろう。嬉しくてその日の晩ご飯の時に子供にその話をしたのだが、「へーそうなんだ」の一言。子供も嬉しそうに見えたのは私の思い過ごしか? 
 音楽室の壁には大音楽家の肖像画が定番であるが、私の時代には無かった写真が追加されていた。それは私が小学校を卒業した3年後に亡くなったストラビンスキーである。ここにいつかビートルズの写真は追加されるだろうか?

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