2011.8.5
楽器を演奏するように自転車を漕ぐ

 新しい車体が納車されてから3週間。メタボ解消に始めた前車のときはハンドルやサドルのポジションを探すのに、走っては調整の繰り返しで標準コースである多摩川サイクリングコースの羽村溯上を4〜5回は繰り返した。今回は天候に恵まれず、まだ羽村まで行けず、半日コースで近間の出撃が続いている。
 一番悩ましいのはサドルの前後ポジションであろうか。自分の巡航速度21~22Km/hで最も効率的に漕げる=最小の筋力で連続して漕げて、帰還後の筋肉痛が無いというポジションを探す。これには5Km程度連続して漕げる平坦な区間が欲しいが、多摩サイは鉄道や幹線道路とクロスする間隔が丁度このぐらいなので物差しとしては便利である。前車より幾分前寄りにして様子を見ている。
 新しい車体で良かったのはシフトレバーがダウンチューブに付いたダブルレバーである。(写真上)
最近はシマノが初めて世に送り出したSISと呼ばれる1段、1段カチッと変速できるレバーが世界を席巻して久しいが(写真下)、SISと区別する為に昔ながらのレバーをダブルレバーと呼ぶようになったらしい。
 昔は皆、このダブルレバータイプで、今から40年程前の中学、高校時代に使っていたスポーツ車で馴染みがあった。当時は手感とチェーンの音で探りながらレバーを操作するものであった。希望のギヤに切り替えるのに1回のレバー操作で1発で決まるものではなく、切り替わった後にチェーンの擦り音がしなくなるまで微調整するものであった。その自転車と長くつきあってくるとたまに1発でキマッタりすると嬉しいものであった。
 一方、前車で初めてSISを経験したときは電光石火の1瞬で変速できるようになったことに驚きを禁じ得なかったものである。日本人らしい匠の技にちょっと誇らしい思いも感じたものであるが、ハンドルの上に我が者顔のように構えているその成りはちょっと抵抗があったのである。新しい車体はドルップハンドルだが、ドロップハンドル用のSISのモッコリが無いところが嬉しい。
前車でSISの電光石火の有り難さは、追い越しや多摩サイの幹線道路を潜る際のスイッチバックで充分感じていたので、ダブルレバーへの回帰は不安があったが近間の出撃の限りでは許容範囲であった。昔はこれでも不自由は感じていなかったのだから.....
 新しい車体を自転車屋から連れてくる時に、久しぶりにチェーンの擦り音を聞きながらレバーを微調整した途端に少年時代の想い出がフラッシュバックしたのがとても嬉しかった次第である。バイオリンやチェロのようなフレットの無い弦楽器を演奏する方なら判ると思うが、自分が出した音を聴きながら瞬時にフレット上の左指を擦り合わせる所作と同じようなものである。楽器を演奏するように自転車を漕ぐ嬉しさといったらよいだろうか。

エッセイ目次に戻る