役者の条件

 先週は更新を休んでしまいました。ごめんさい。風邪をひいてしまって週明けにでも更新しようと思っていたのですが、週明けは2月度の締めの週という事で想像以上に仕事が多忙でちょっと時間がとれませんでした。こんな短い文章、とっとと書いてしまえば良いと思うんですけど結構時間がかかってしまうんですね。その割には誤植が多いんですが(笑)。という事で2週間振りの更新となります。今週は題して「役者の条件」。前から一度書きたいと思っていたテーマです。

 ミュージカルの役者さんに求められるものって一体なんでしょう。「歌がうまくて、踊りもできる事。」これが一番考えられる回答ですね。あと当然「芝居のできる事。」という条件もありますね。こう考えるとミュージカルの舞台に立つのってやっぱり大変なんですね。でも「歌えて踊れて芝居もできる」人だったら誰でもいいかというとやっぱりそうじゃあないですよねえ。芝居の内容にもよりますが、アンサンブルだったら「歌えて踊れて芝居もでき」ればOKでしょうが、主役級の役についてはそれだけでは絶対ダメですね。

 僕が(主役級を演じる)役者さんに求めるものは圧倒的な存在感なのです。その人が出て来ただけで何となく舞台が締まるというか、舞台の雰囲気が変わるという感じ。アンサンブルの中に入っていても別に何も特別な事はしていないのに何となく目がいってしまうっていう感じですね。例えば「オペラ座の怪人」の一番最初のバレーのレッスンの部分のクリスティーヌなんかは良い例です。あの場面では僕はどうしてもクリスティーヌに光っていて欲しいのです。残念ながらそういうクリスティーヌには未だにお目にかかっていませんが・・・。

 存在感というのはある意味で一種の「狂気」のような感覚だと思うんですね。それでいてなおかつエロティック。妖しげなまでの色気ですね。色気というと性的な感じのする言葉なんですけど、そうではなくてファントムの色気とでもいえば良いのでしょうか、こういう感覚って言葉にするのはとても難しいですね。僕が今までに見た舞台で一番素晴らしい「狂気と色気」を見せてくれた男優さんは「ジーザス」の鹿賀さんと「ラ・マンチャ」の幸四郎さん。鹿賀さんといえば今はミュージカルは「レ・ミゼラブル」しかやっておられないようですが、鹿賀ジーザスは本当に身震いの来る位のジーザスでした。また幸四郎さんの「ラ・マンチャの男」はお話自体が一種の狂気を通した物語なのですが、本当にはまり役という感じで、何度見ても感嘆してしまいます。

 もう一人、いつどんな舞台でも良質な狂気と色気(笑)を見せてくれるのが市村さん。はっきり言ってもうこの人は別格という感じですね。天性の役者さんですね。何をやってもはまってしまいますし、期待を裏切る事がありません。

 それに加えて役者さんの場合は「見栄え」という問題もありますね。もちろん男優さんの見栄えも大切ですが、やはり女優さんにとっては非常に重要な要素ですね。やはりクリスティーヌ・コゼット・マリア・ベルなんていう役どころは綺麗な女優さんにやって欲しいですよね。(こんな事をいうとここを見て頂いていいる女性の方に怒られてしまいそうですが、でも役者さんなんだから容姿も才能のうちですよねえ。)容姿といえば、この前「ソング&ダンス」で見た堀内さん、凄く綺麗になっていたよう気がしたんですが、そんな風に思いませんでした?

 僕もいろいろな舞台を見ていますが、今までに一番息をのんだ女優さんは「マイ・フェア・レディ」の大地真央さん。ドレスアップして出てくるシーンはもう圧倒的な美しさと存在感で、何も考える事ができずにただ見つめてました。先に「マイ・フェア・レディ」を見てしまっていたんで、「ローマの休日」の時はあまり感じませんでしたが、「ローマ」を先に見ていたらやっぱり息をのんでいたでしょうね。宝塚ってまだ見た事がないんですが、OGの方を見ていると舞台映えする方が多いですね。ただテレビや映画だとちょっと残念という感じがしてしまうのですが(笑)。

 で、四季なんですけど(またその話題かという声が聞こえそうですが(笑))、男女を問わず、こういう存在感のある役者さんがどんどんいなくなってしまってますね。今の役者さんって何かサラリーマン的で優等生。歌も踊りもそこそここなすけど、それだけっていう感じ。東宝ミュージカルなんかは(ある程度の制約はあるでしょうが)割と自由なキャスティングができるのに対して、四季の場合は当然ながら劇団員の中から選ばなければならないでしょうから、主役級の役者さんの層の薄さがちょっと目立ってしまってますね。今の四季で「狂気と色気」を感じさせてくれる予感がする男優さんって沢木さん位じゃあないかなあ。僕も他に好きな役者さんはたくさんいるのですが、なかなかこの二つを感じさせてくれる役者さんっていないですね。

 女優さんに関しても四季の場合には「歌える」女優さんは結構いるのですが、容姿も含めて主役を張れる女優さんってあまり多くないですね。確かにクリスティーヌなんて歌えないと話にならないのですが、かと言って「地味でめだたないクリスティーヌ」なんて見たくないと思うのは僕だけではないはずです。

 高いお金を出して見る舞台、やはり日常の事は忘れて、芝居の世界に没頭したいですよね。その為にはこれからどんどん狂気を持った役者さんに出てきて欲しいものです。四季だけじゃあなくて東宝や他の舞台でも当然一緒なんですが。

(99/2/28)