3月週一回観劇ツアー(?)の最後を飾る「南太平洋」です。僕はこの作品は映画で見ただけで、舞台は初めてです。スタンダードになった曲も多いですし、キャスティングも一路さんという事で楽しみにしていました。この日はJCBの貸切公演だったのですが、普段見る舞台とは、客層が大幅に違っていました。普段は若い女性が圧倒的に多いのですが、この日は年輩の方が結構多く、また夫婦で来ていらしていると思われる方も目立ちました。「南太平洋」という素材のせいなのか、貸切公演のせいなのかはちょっとわかりませんが、僕より年輩と思われる男性の方が非常に多い客席でした。
お話は第二次世界大戦中の南の島でのラブ・ストーリーです。戦争を絡めたミュージカルというのも「ヘアー」や「ミス・サイゴン」等結構ありますが、さすがに昔のミュージカル、話としては結構わかりやすく展開して行きます。リアットとケーブル中尉の恋物語は何となく「ミス・サイゴン」のクリスとキムに似ていて、どちらも悲劇的な終わり方をするのですが、「南太平洋」の方は後のハッピーエンドで包み隠されて、あっさりとした描き方をされています。やっぱり勝ちに終わった第二次世界大戦と、悲劇的な結末に終わったベトナム戦争という事が反映されているのでしょうか。
僕は根が単純なのかハッピーエンドなラブストーリーというのはそれだけで結構感動してしまいます。最近見た作品で言えば「She Loves Me」とか、「美女と野獣」のような作品ですね。「オペラ座の怪人」のように考えさせられるような作品も好きですが、単純に「良かったね〜♪」と言えるような作品は3月、末のような多忙な時期にはいいかもしれません(笑)。
さて、出演者のほうに目を向けて見ると、これはもう前田美波里さんの一人勝ちっていう感じでした。あの濃いキャラクターを見事にこなしています。あ、そうそう、一応キャストを書いておきましょう。
で、やっぱり前田さんの一人勝ち(笑)。確かに曲にも恵まれている(「バリ・ハイ」や「ハッピー・トーク」)という所はあるのですが、ああいうキャラクターをこなせる女優さんっていうのはなかなかいないのでは無いのでしょうか。声量も豊かで、本当に前田さんだけが目についた舞台でした。 「レ・ミゼラブル」の3人のバルジャンの中では一番のお気に入りの滝田さんですが、この舞台ではちょっと印象が薄いですね。まあ主役とは入っても出てくるシーンはそんなに多くないですし、「ここぞ」という聴かせ所もあまりなかったですね。まあ別にこれは滝田さんのせいじゃあなくて、台本がそうなってるんでしょうけど。やはり「女優さん至上主義」時代のミュージカルなのかな(笑)?
エミール・ドゥ・ベック 滝田 栄 ネリー・フォーブッシュ 一路 真輝 ケーブル中尉 松村 雄基 ブラディ・メリー 前田 美波里 ルーサー・ビリス 綿引 勝彦 ブラケット大佐 斎藤 晴彦 ハービン中佐 山賀 教弘 リアット みほこ その「女優さん」ですが、一路さん、ちょっと精彩に欠けていたかな、表情が硬いっていう感じ。一幕の最後の方に「素敵な人に恋してる」というナンバーがあるのですが、ここは、自分の「恋してる」っていうわき上がってくる思いを歌い上げる所で、心の底からの「歓び」を歌ってくれる見せ場だと思うのですが、何となくうわべだけ笑っているという感じでしたねえ。カーテンコールでの滝田さんとの絡み(?)ではとても素敵な笑顔を見せてくれたのに、ちょっと残念でした。そういえば、この日買って来た「エリザベート」のビデオでの一路さんはとても素敵だったんですけどね。もしかしたら笑顔のシーンが苦手なのかなあ(笑)。
今回のキャストで、期待と不安が入り交じっていたのが松村雄基さん。この人、僕には「スクール・ウォーズ」(だったかな)の不良少年役のイメージしかありません。松村さん、歌えるのかいななんて思っていたのですが、それなりに歌えていましたね。さすがに声量はイマイチでしたが。この人、これからきちんと訓練すれば結構良いミュージカル役者さんになれるんじゃあないかなあなんて思っていました。あと、斎藤晴彦さんもいい味を出していました。歌が無いのは残念でしたが、斎藤さん演じるブラケット大佐の「中年男性の魅力」論にはおもわず賛同してしまいました(笑)。その他にもハービン中佐役の山賀さん演じるいかにもマジメで融通のきかない軍人さんもはまっていました。そういう意味でいうと脇を固めるキャラクターがとても魅力的で、その分主役2人が目立ってこないという舞台だったような気がします。考えてみたら、この主役2人はとても真面目なキャラクターとして描かれているんですね。もしかしてこの作品が書かれた当時はこういう真面目な役が受けたのでしょうか。現在ではちょっと崩れたキャラクターのほうが受け入れられるのかもしれませんね。
(99/3/28)