久しぶりのミュージカルです。カルメンです。世間的に言えば真央さんです。でも僕的に言えばほのか様です。ラ・マンチャを見て以来なので一ヶ月以上「ミュージカル」というものを見ていないのでルンルンと青山劇場に向かったのでした。この日の席は結構後ろのほう。という事で、今までは持った事のないオペラグラスを途中で購入してしまいました(笑)。
さて、カルメン(大地真央さん)ですが、ジプシー女の情熱的な生き方を描いた作品です。ところが演出のせいもあるのか、僕の目から見ると「情熱的」な生き方というより単なるわがまま女のように見えてしまうのです。「私と仕事とどっちが大事なの!?」今時こんなベタなセリフを聞く機会も無いとは思いますが、まさにこんな感じです。どっちが大事と聞かれても困るんですよねえ。「自由奔放」というよりはタカビー女という感じです。最初にこういう風に感じさせてしまうのはちょっとまずいんじゃあないでしょうか。それともこんな事感じたのは僕だけなのかな。
という事で舞台が始まるとすぐ「カルメン=いやな女」という構図になってしまったので、その後のストーリーがどうもピンと来ないんですね。ホセ(錦織一清さん)にしろエスカミリオ(石井一孝さん)にしろスニガ中尉(海津義孝さん)にしろどうしてカルメンにのめり込んで行くのか良くわからないんですね。ホセなんか要は「惚れた女の為に仕事も投げだし殺人まで犯してしまう」んですよね。普通ならしないですよね。それを正当化するにはカルメンに強烈な魅力必要ですが、残念ながらそこまで描ききれていません。個人的な感想を言えば「何であんな女を好きになるの?」という感じ。情熱的で奔放という面を強く打ち出そうとしたのがちょっと逆効果になってしまったような気がします。
2幕になってもちょっとした「違和感」は修正されてきません。突然ホセの冷たくあたるカルメン。その理由もよくわかりません。そしてホセとエスカミリオとの間で奇妙な二重生活が始まるのですが、その時のカルメンの心理状況も(少なくとも僕には)よくわかりません。いったいカルメンの本心はどこにあるのか。カルメンがホセの母親の危篤を知り、ミカエラ(鈴木ほのかさん)の元にホセを返す時だけは何となくカルメンの気持ちがわかったような気がしましたが、でもそれだけ。なぜホセはミカエラを残してまたカルメンの元に戻ってきてしまったのか。なんか全ての行動が僕のような凡人には理解不能のまま進行して行きます。
そして最後にホセはカルメンを刺すのですが、本来であれば、ホセはカルメンを刺す事で自分の中のカルメンへの思いを昇華させ、カルメンは刺される事によって自分の中にあるホセへの複雑な想いを精算するという事なのでしょうが、その前のストーリーに入り込めていないと「何だかなあ」という感じです。それにエスカミリオはどうなったの?ミカエラは?なんか消化不良の固まりという感じです。
舞台の構成としては決して面白いとは言えない舞台ですが、役者さん個人を見てると決して悪くありません。真央さんは相変わらずの存在感です。歌はあんまり感心しませんでしたが、でも舞台に立っているだけで絵になってしまうというのはもう凄いですね。ただキャラとしてはああいう役はあまり合わないのかな。やはり「お姫様的」なものがお似合いです。「ローマの休日」とか「マイ・フェア・レディ」なんていうのはもう他の人が思い浮かばない位のはまり役ですが、カルメンに関してはキャラとしては鳳蘭さんの方がお似合いかなあなんて思っていました。でも決して悪くありません。さすがは真央さんという所です。
錦織君はだいぶ心配していたのですが(失礼な奴)、まあまあと言った所でしょうか。真央さんの存在感に比べると吹き飛ばされそうなのですが、その分カルメンに翻弄される感じが良く出ています。あとは石井一孝さんの「濃〜いエスカミリオ」。スケベそうなちょび髭といいピンクのタイツといい怪しさを醸し出しています。結構はまってる!と思ったのは僕だけではないはずです。それに脇を固める江波杏子さんや宮川浩さん、近藤洋介さん、岡田静さん、麻生かほ里さん等もいい味だしてますし、アンサンブルの出来も上出来です。
で、ほのか様ですが、これ結構「おいしい」役なんじゃあないでしょうか。カルメンを中心としたちょっとわかりにくい役柄の中にあって唯一わかりやすり清純なキャラですし、しっかりと「聴かせ所」もあります。登場シーンは少ないのですが、結構印象に残る役だと思います。個人的には一幕のミカエラを遠目に見た時、「レ・ミゼ」のコゼットがだぶって見えてちょっとだけ「懐かしモード」に浸っていました。でも相変わらず素敵な声と演技。まあ何見ても良く見えるんですが、ミカエラはおいしい役でしょう。
という事で個々の役者さんの出来は決して悪くないんですが、「舞台」としての出来はイマイチのような気がします。逆に言えば役者さん個人を目当てで来る方にはあまり不満もないのかな。多分真央さん目当ての方が多いでしょうから、そういう意味では満足された方も多かったかもしれません。
青山劇場は地下に売店があるんですけど、そこの品揃えを見ると7割が真央さん関連、2割がニッキ関連、残り1割が石井さん関連でした。ファンクラブの案内のチラシも真央さんのものは同じ物が色違いで3部置いてあり、石井さんの案内も置いてありました。ふんっ、どうせそんなもんさ。でもほのか様、しっかりと印象づけてくれたんで良しとしてあげましょう(笑)。
(99/10/17)