ぬぬ 

「明けましておめでとうございます」と、年頭の挨拶をするのがはばかられる始まりでした。ご存じのように、元旦の夕方に石川県能登地方で大きな地震がありました。
 わが家は、例年のように、家族11人が年始の集まりをしていました。最高齢の義兄が90歳、次の義兄が86歳、姉84歳と81歳、そして私75歳。姪夫婦が五十代、甥夫婦も五十代、その子どもたちが二十代二人です。もはやここも高齢者社会さながらです。

 こうなると、生きて集まれるだけでいいことになります。お酒もお料理も多くはいりません。

 一年に一回、本棚から登場する「おせち料理」の本を眺めて「昔のお母さんはよくやったわ」と感心しながら、おしるし程度の料理をつつきます。百人一首も双六もトランプも、子どもの頃を懐かしむあそびすら思いつきもせずにおしゃべりに興じます。こういう家行事は子どもがいる頃が華ですね、けど、高齢になっても集うお祝い事があるというのはいいものです。
 夕方になって一段落というときにテレビをつけると、地震のニュースでした。

 ここ数年はコロナウイルスに脅かされていました。そこで生命誌の中村桂子さんを知り、ウイルスが地球上には人間よりはるか以前に存在していたことを知ったとき、地球はいろんな生物が生きていて、人間の都合良くはいかないものなのだと少しは自覚しました。
 今度は地震です。地球はプレートに覆われていて、海の下では新しいプレートが生まれ、押し上げてずれて動くのが地震。日本の地殻はプレートの境目が多いために世界でも地震が多いところのようです。検索すると様々な解説がわかりやすく掲載されています。ともかく、なにも地震が多い島に住むことはなかったのにと思えども仕方ない。さらに地球そのものがやっかいな星なのです。危険をはらんで、生きながらえているということを少しは自覚しました。
 元旦からとんでもない災害に遭われた方々には、ほんとうにお気の毒です。関東は晴れていますが、あちらは雨や雪というより過酷な状況です。日々救出が続けられ、避難所の生活が報道されています。こんなに時代が進んでも、何かがあったときは手も足もでない、遅々とした方法しかとれないことに人間の小ささを感じます。

 翌二日の夕方、テレビをつけると、今度は飛行機事故の報道。続けざまのことにギョッとしました。ここまで燃えてしまうのかと思うほどの飛行機の炎上。映像で映すことはできるのに助けることはできない。乗務員の誘導もあって、無事に救出。海上保安庁機に乗っていた方々はお気の毒なことでした。
 今回は地球のせいではありません。人による事故です。乗用車が前の車に近づくと自動的の止まるとこまで開発されているのに、飛行機はそんなことはできないのでしょう。まだ、事故原因は解明途中ですが、最終的には人の判断であのたくさんの飛行機のコントロールをしているのです。人の能力はすごいけれど、文明はどんどん進化していくけど、過信してはいけない人の小ささを感じます。
 さらに戦争まで続いています。人間どんなに時代が進んでも、根本的な欲を捨てることができないあきれた動物なのだと知らされます。いやはや、なんともすごい幕開けでした。

 

 そんな状況の中、新年早々浅草に歌舞伎を見に行きました。
 浅草寺周辺はすごい人です。中国語? 韓国語? 台湾? 聞き分けられないけれど、ともかく観光客だらけのようです。今や駅にはそこかしこにエレベーターが設置されています。私、このごろ膝が痛いんです。階段や坂の下りがいけません。だからエレベーターに向かいます。と、ベビーカーの行列なのですが、日本人ではありません。レンタル? 大きなトランクを持っている人もいます。だから一台に数人しか乗れません。でも並びます。痛くなるといやだから。
 派手な着物を身につけて歩いている人がいっぱい。これまたレンタルのようで、本来の着物とは思えない派手なものや、フリルが着いたものなどさまざまです。食べ物屋さんがいっぱいで、屋台もいっぱい。驚いたのはおみくじです。近づいてみると買い方が英語と中国語で書かれています。肝心のおみくじにも訳がついているではありませんか! 観光立国ニッポン!
 新春歌舞伎は浅草公会堂でした。補助椅子がでるほどに超満員。幼い頃おばあちゃんと歌舞伎を観に行くのが好きでした。話の筋など全くわからないのに、見ているのが好きでした。最近は解説のイヤホーンを借ります。訳がわからないといらつくのです。今回は華やかな舞台ですから解説がなくてもと借りませんでした。なのに、なのに、「これ誰の何の話?」借りればよかったと思ったんですよね。ちょっと自分が貧しくなっている気がしました。わからないけど楽しむという感性や感覚で受け止める能力が低下した気がしました。40歳の時ニューヨークでミユージカルを観ました。言葉ぜんぜんわからないのに感動したんです。あの時まではましだった・・・今年はもっと柔らかな頭と感性を磨いていかなければ!
 ついつい長くなりつつあるつれづれですが、本年もよろしくおつきあい下さい。

                                        (1月8日 記)

 

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