ぬぬ 

 りんごの木の4、5歳児クラスは、横浜市営地下鉄「センター南」駅から徒歩6分くらいの所にあります。
 駅からほぼ遊歩道を歩いて来れる場所です。ここに引っ越してきたのは1996年ですから、27年も前のことになります。
 当時は駅はあるけれど、公共施設や商店等はなく、空き地だらけでした。園庭のないりんごの木としては、お弁当と水筒をもって何処にでも行ける駅が近いのは大事! さらに近くはバッタの宝庫、ザリガニ釣りもできる水場もあちこちに。
 教室の前は広場(公開空地)、遊歩道を少し先に行けば公園があり、この立地は抜群! ここを見つけたときの興奮を覚えています。
 その頃は待機児問題もなく、園舎・園庭のない保育園や幼稚園は少なかったと思います。なので、前の広場や公園を保育・あそび場に使っていることに、周囲からの批判や抗議は多々ありました。周辺がどんどん開発されて人口も増え、立派な都会になっていきましたので、目立つことこの上ありません。目の前の土地が公開空地であることや、公園にはどんな法律があるのかも調べたり、弁護士に相談もしました。法律違反ではないこと、園舎・園庭を持つ財力はないこと、周囲の方とのコミュニケーションを通して慣れていただくよりないと腹をくくりました。
 ところがそれから、待機児対策などで、園庭がなくても、保育園設立が許可されるようになりました。そして、園庭のない園は近くに公園があることが条件になっていました。ということで、子どもたちの姿が街の中で見られることも多くなり、遊歩道や公開空地、公園には、どこからともなく、幼い子どもたちを連れ歩く園の姿が見られることになりました。
 その後、りんごの木は公園の隣の店舗も借りたので、二つのりんごの木を行き来します。ありがたいことに遊歩道なので車の心配はありません。

 さて、車の心配はないけれど、この道は駅に向かっていますので、歩行者が行き交っています。自転車も走っています。本来、遊歩道は歩く人やあそんでいる人のためで、その人を脅かすような場合は降りなければいけないとなっていますが、なかなか・・・。さらに駅に向かって上り坂になっていることもあり、自転車はここからスピードを上げて登り切りたいところにりんごの木があります。
 子どもが飛び出す、裸足で行き来する、前のひろばであそぶ、りんごの木の子どもたち。
 どう想像なさいます?
 反応は様々、怒りに近い苦虫を潰したような顔をなさる方、眉間にしわを寄せながら通り過ぎていく人、「危ないよ」と子どもに声をかけてくださる方、ほのぼのと眺めて行く人、「元気ですね」とお声をかけて下さる人といろんな気持ちの方々に囲まれています。

 数日前、子どもたちのミーティングで、りんごの木のおとな(保育者をこういう言い方をしています)が、「このごろね、この前を通っていくおとながこういう顔していくのよ(眉間にしわを寄せた顔をしました)」と口火を切りました。
「そういうおとなを見たことがある?」と聞くと「ない!」と子ども。確かに子どもは自分に夢中だし、視線が低い。
「そういう人は、どういう気持ちなんだと思う?」と話を進めます。
「心配しているのかなぁ」と言うと「あぶないといわれたことがある」という子もいましたが、「しんぱいなときは、そんなかおにはならない」と言う子も。
「前の広場は、りんごの木のあそぶ所って思っている?」と聞くと、「うん」。
 そこで、その場所のこと、今までの経緯を私から話しました。
 私たちだけの場所ではなく、みんなが歩いている場所、だからすごい勢いで走ってくる子がいると、恐くて危ないと思うこともある。などなど、周囲の方たちの気持ちも伝えます。
「自転車は降りなくちゃいけないのよね」という保育者も。「でも、怪我をしたら痛いのはこっち」だから、避けるようにはしたい。
「ここはお互いさまにしない? ここであそばせてください。こっちも気をつけるけど、そっちも気をつけてくれるうれしい。走り回るあそびは公園に行こうと」めずらしく私が結論じみたことを言いました。。
さて、もうひとつの眉間にしわの原因は、裸足で走り回っているということです。
 公開空地は舗装されています。土がないので、汚れないのです。気持ちが先行している子どもにとっては靴を履くのはもどかしい。で、家も外も出入り自由が現状。一般的には痛い物が落ちていたら大変とか、足に当たって危ないと思うのですが、そういうことは滅多にないようです。
「じぶんのあしなんだから、じぶんのすきでいい」

 もっともな子どもの発言で〆となりました。
 なんだか職員会議を子どもたちとやっているような気分でした。おとなの事情も含めて、なにもかもみんなで共有する。いろんな考えの人と、どう折り合っていくかも考える。
 子ども家庭庁ができて「子ども真ん中社会」と言われはじめました。りんごの木のようなことだよねという方もおられます。そうかもしれません。おとなも子どももなかなか大変なことです!!

                                         (2月13日 記)

 

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