ぬぬ 

 いよいよ年度末になり、りんごの木ではつぎつぎクラスの最終日となっています。
 なんといっても、りんごの木を巣立っていく一番組は、残りわずかを精一杯あそんでいます。
 先日のことです。ペットボトルの蓋に泥を入れています。程よい堅さの泥に絵の具も入れて○○味と、そうです、これはチョコレートなんです。
 泥を入れたチョコレートを、あそびように使っている雨樋に一列並べます。それを斜めにして上から水を流します。水に押されてチョコレートが流れ落ちていくのです。なんと、チョコレート工場なんですって、流れてきたチョコレートは並べて売るそうです。
 すごく面白い! 思わず手を叩いてしまう程です。雨樋の接続が悪いと止まってしまうし、水の流れが弱いと進まない、水の勢いが強すぎるとチョコレートにかかってこぼれてしまうのです。あそぶって、いろんなことを工夫し学んでいるのを実感します。
 壊れたチョコレートはネズミがいて食べたことになり、退治のためにおろし金が立てかけられています。
 この後のミーティングで、チョコレート工場の話になりました。すると、子どもたちにチョコレート屋さんのイメージが共有され、アイデアが生まれてきます。綿菓子にチョコレートをかけたらおいしそうだから、それも売ろう。ポップコーンも売ろうか、じゃあ、ショーもやるといいんじゃない? ショー見ながら食べようよ。お祭りにしよう。おもちゃも売ろう、ポテトもと、話はどんどん発展していきます。

 大きな声で叫んで聞いて欲しくて仕方ない子もいますが、静かにしている子もいます。そんな子も、肝心なときに「わたし、それやる!」と主張するのですから、聞いているんです。保育者は確認と整理だけ。
 あまりに盛り上がっていくので「ねえ、本物の食べれるのをやるの?」と聞いてしまいました。すると「チョコレートはつくったらたかいから、うそっこなの」ですって。「でも、ポップコーンはほんものがいい」と言い出す子。「ぼくアレルギーだからたべれない」と声を出す子。「わたがしはつくりたい」と言う子、「綿菓子機を出すのは大変だし、本物だったら目が離せないからいやです」と保育者が言う。
 まさに、それぞれがちゃんと自分事として考えて、話を進めていくのに驚きました。
 売る人、買う人、お店をやる人、ショーをやる人と役割分担までしています。翌日はいいけど、その次の日は予定があることを保育者が告げて、その日の午後と翌日に準備して、午後にやるというタイムスケジュールまで決まりました。
 そして、それは実行されました。短期だったので、子どもの勢いがそのまま進行された気がします。まさに、この時期だからこその展開です。

 

 数日後、一番組は遠足に行きました。目的は潮干狩り。これまた、以前からそこがおもしろいこと、マテ貝がとれることを力説し、写真ももってきた子がいます。穴を見つけて塩を撒くと、中から出てくるという取り方の説明(本人が何回か体験済み)も。
 この完璧なデモンストレーションに惹きつけられ、文句なしに決まった場所です。大人の算段は交通手段、準備する物、安全性と付き添うおとなの人数です。残念ながら他のクラスの親の会があったので、私は同行できませんでした。いい天気で、収穫したものをもって、疲れ切って帰ってきたようです。
 おとなのカリキュラムで進められるのではなく、子どもと共に作っていく保育とはこういうことなのではないでしょうか。それは楽しいです。昨年と同じこともなく、保育がマンネリ化することもなく、おとなを越えた発想と進行。これが子ども主体の保育のかたちではないかと思います。
 子どもたちを尊重すればするほど、信頼関係が生まれ、子どもの力が育っていくのです。それはおとなたちも育てられます。どんな援助が必要なのかを見極める、保育力がつくとも言えます。

 保育現場が親にサービスしているのか、親がサービスを要求しているのかわかりませんが、「親の手を煩わさずに、安心安全管理」をモットーに保育している園が多くなってきた気配がします。もちろん、命を守ることは最低限の絶対ですが、こんな話も聞きます。
 -----朝は5分以内に親から子どもを引き取ります。園内の入り口までで結構です。ドキュメンテーション(写真入りの報告)を頻繁に出すので、子どもの様子はわかっていただけます。おむつは業者が入っているので、持って来たり、使用済みのを持って帰ることはありません。親が喜ぶ行事はやめません。ご負担がないように短時間で我が子のが見えるようにします----
 なんだか、親の負担軽減のために、親子関係を乗っ取りかねない気がします。
 手はかかるけど、子どものおもしろさを楽しんで欲しいです。日々、成長過程にある子どもの今は今だけです。見逃したら、もったいないと思いますよ。  (3月17日 記)

 

●最近のバックナンバーはここをクリックしてください。