柴田 愛子                 

 4、5歳児は先週一週間「とことん週間」でした。
 今回は、子どもたちのあそびを見ている保育者が5つのあそびを提示しました。その中からやりたいあそびを選び、月曜から金曜まで、とことん続けるというものです。(年度によっては、子どもからの提案で決めるときもあります)
 三学期のこの頃になると、一つのあそびに夢中になってやり続ける。昨日、今日、明日と同じあそびを持続し深めていく、そんな力が子どもたちについてきています。そこで、寒い時期ではありますが、「とことん週間」を設けています。

 5つのあそびとは……
「石たんけん」 石を求めて、外を探険して歩きます。
「ステージ」 自分で作ったパペット人形で劇や歌をつくり、最後にはそのステージを見せます。
「けいと」 毛糸を使って編み物をし、作品を作ります。
「なわとび」 ひとり縄跳びや集団の縄跳び歌など、跳び続けます。
「家づくり」 畑でトントンギコギコ、ほんとに入れる家造りです。

 人数を調整したりはしませんが、どれもそこそこで、8人から18人。探険と家がいちばん大人数でした。
 この間、それぞれの活動場所が違うので、お互い顔を会わすことも少なくなります。

 私は石に興味があったので、石探険に二日参加しました。
 まず、初日は自分はどんな石を探したいのか、具体的なイメージを浮かべます。
 つるつる、ぴかぴか、まーるい、という子が多かったですね。
 どこに行けば見つかるかを出し合いますと、駐車場が出てきました。
 りんごの木の周辺はほとんどがコンクリートです。公園は土ですが、石はありません。
 確かに、駐車場にはある。
 その他にザリガニを捕ったところ、川、山、海と広がっていきました。
 そして、毎日あちらこちらに石探険です。
 私が同行したのは、近所の初日と、電車に乗りついで「多摩川」の河原に行ったときです。
 初日、歩き始めて50メートルも行っていないのに、「あ! いしがあった!」と拾い始めます。
 目的を持つというのはすごいもので、石が目に飛び込んでくるようです。寒い中を歩き回り、途中、水あそびまでして(石を洗ったのがきっかけになってしまったのですが)両手一杯に「おもい、おもい」と言いながら持ち帰りました。
 子どももそれぞれで、「こんな石、どこにあったの?」と、すてきな石を見つける目を持った子がいます。
 同行して思ったことは、石って、ないようでどこにでもあるものだということ。
 子どもたちは重い石を引きずってくると、布の袋さえ破けてしまうこと、ビニール袋は役に立たないことを知ったようです。

 四日目には河原に行きました。
 行きの電車に乗ったとたんに、子どもが石を見つけました。線路です。それも田園都市線の途中までは大きな石、トンネルの中にはなく、その先は砂利であることを私も初めて知りました。
「なぜここに、いしがあるんだろう」と研究者顔をしながら話し合う子もいました。

 河原。広いということはほんとに気持ちがいいです。開放される感じです。
 大きな丸い、お望みの石がたくさんありました。
 川の中に入っていくと、濡れている石は光って見えます。
 どんどん集めると、もう、立てないほどになってしまいます。徐々に選ぶようになっていきます。
 ただ、一度手にした石って、もう特別になってしまって、なかなか捨てられないものだと実感しましたね。

 この日は、石を集めるばかりでなく、すっかり石であそびました。
 5歳児がいちばんはまったのは、どこまで遠くに投げられるか。水面をいくつ跳ねるように投げられるかです。
「うでがいたくなった」と言うほどやっていました。
 他の子はダム造り。石を積んで堰を作っていきます。なんだか、どちらも懐かしいあそびです。
 りんごの木が、少人数で狭い部屋しかない頃、こんなふうに、外にばかり出かけていったことが懐かしく思い出されました。
 いえ、こんなふうに、大きな空間にあそぶことが大事なことを思い出させられました。

 帰りの子どもたちの言葉。
「いしって、きれいだけど、おもい」
「きょうは、たのしかったなぁ」でした!
 一週間をとことん過ごした子どもたち、月曜日にはそれぞれの活動報告会がされます。どんなふうに石を披露するのでしょう? 
 そうそう、家はできたのでしょうか? 編み物はどんな? 毎日縄跳びってどうだったかしら? ステージはどんなことになっているのでしょう……。楽しみです!
 三学期、ほんとに子どもたちが主役で、保育者は脇役と実感するうれしい時期です。
(写真は一週間を報告しあった月曜日の様子。左は「石チーム」下は「毛糸」グループの作品です。2月20日 記)

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