修験道には、山伏修行、水行、火行などがあるが、
火行は、毎年3月第2日曜日におこなわれる火渡り祭が火行の代表的修行である。
高尾山麓の祈祷殿前の広場でおこなわれる柴燈護摩(さいとうごま)奉修の後、残り火の上を素足で歩く「火生三昧(かしょうざんまい)」の荒行が、最大の火行として知られる。
柴燈護摩とは、修験道において野外で修される護摩修行のこと。
護摩とは、密教の代表的な修法の一つで、密教では火は如来の真実の智恵の標示であるとして、火中に投ずる供物を人間のさまざまな煩悩になぞらえ、
これを焼き浄めて悟りを得ることを目的としている。

3月11日、東日本巨大地震と大津波のため、大惨事が起こりました。
今日、高尾山で火渡り祭があるというので、気休めにしかならないかも知れませんがこれ以上惨事が起きないよう、火伏の行事ということで、参加してきました。

早めに行って、高尾山内八十八ケ所のうち少しでも回っておこうと、ケーブルカー乗り場の手前にある「不動院」に八十八ケ所案内をもらいに行きました。
不動院境内に「梵天の神輿」が置いてありました。
修験道では御幣や幣束のようなものを梵天と呼ぶ。高尾山の場合、飯縄権現の加護を得て、信者に配り、厄除けの御守札とする。
御神輿のように台に乗っているのが梵天である。
   


高尾山内八十八ケ所のうち一番から16番まで周ってきて、昼食を食べて会場に向かいました。

会場は、車のお払いをする祈祷殿の駐車場で行われます。
   
祈祷殿                                  会場 


飯綱大権現の見守る前で、準備が進められます。
    


行が始められるにあたって、主催者側から今回の大地震の被災者に対する鎮魂の言葉があり、参加している方全員がその気持ちで参加していたと思います。
梵天が入場し、飯綱大権現の前に置かれます。



大導師入場。入り口を固めた山伏との問答があり、付添の僧が菅笠で地面を払いながら先導していきます。
武士の小姓のような小僧を連れている。その子の衣装も朱であることを考えると、山主の後継者という位置づけですね。
   


吹奏貝が吹かれ、行者の祈祷が行われる。
   


吹奏貝はアジア・アフリカ・アメリカなどで広く用いられ、中国の敦煌(とんこう)の壁画中にも見られるという。
日本では平安時代以降に修験者・山伏の峰入修行や法会(ほうえ)の場の法具の一つとされた。
平安末期に後白河法皇によって集成された梁塵秘抄(りょうじんひしょう)に〈山伏の腰につけたる法螺貝の〉とあり、
先達は出寺・入宿・案内・応答などに法螺貝を吹き分けて、山伏の集団行動や日常の集団生活の合図とした。
法螺貝の音は悪魔や猛獣を恐れさせる呪力があると信じられ、山伏は法要の前や途中で法螺貝を吹く。

火打石で会場が浄められる。



斧、刀、弓でお払いがあります。
《秘密神力の斧にて一切の煩悩の賊を切り払う。》 いかにも力がありそうな弁慶のような斧先達(おのせんだつ)が渾身の力を込めて斧を打ち下ろす姿は、迫力満点です。
《神力加持の法弓を持って生死の悪魔を破る。》 法弓先達が呪文を唱えながら道場の四隅から矢を放つ。弓を持つ左手は手っ甲をして手首に珠数を巻いています。
    


《清浄の大慈悲の水を洒いで衆生の心地を潤す。》 阿伽先達により、阿伽が護摩壇に注がれる。阿伽とは水のことです。



いよいよ点火です。点火先達が祭壇前の浄火を点した松明から採火し、法螺貝が一斉に鳴り響く中、護摩壇の中央部に火がつけられます。
    


《火伏のお守を護摩の聖火にあてて開眼する。》 祭壇の前に据えられていた「梵天札」を差した御神輿を担ぎ、火が立ち上り始めた護摩壇を廻って火にあてます。
この後梵天札は道場の外に据えられ、祭神の加護を受けた魔除けの護符として信者や一般客に有償で分け与えられます。
この日この会場でだけ発行される「火伏せ」のお守りです。
    


火は燃え盛ります。
    


頭から水をかぶって頑張ります。
     


散華がありました。
この日一番うれしかったことですね。
私が居るところでまかれた時、薄いから播かれた瞬間見えなくなってしまうんですね。
「ありゃ、こりゃダメだ」と思ったら、構えていた手に何かあたって、反射的に閉じた手に入っていました(嬉)
散華のほうから私の手に入ってきたくれたんですよ。幸運を感じた一瞬でした。
    
 表                   裏


燃え尽きるように、熊手でならしたり、大変です。
    


行が始まる前から大なべで湯を沸かしていましたが、これも行で使うものでした。
熱湯を、枝葉を使って身体にかけます。
   


燃え尽きるまで時間がありそうなので、山の斜面に腰をおろして休みながら眺めていました。



火渡りの準備ができたようです。
   


火渡りのために、はだしになります。
   


《火生1三昧2(かしょうざんまい)の功徳(くどく)をのべる。》 いよいよメインイベントの火生三昧といわれる山伏の火渡り(ひわたり)がはじまります。
山伏がこの行をおこなうのは、激しい不動信仰(煩悩を焼き尽くす不動明王を尊ぶ信仰)による菩提心(ぼだいしん)を表すためという。塩をまいたあと、先達が巻物を読み上げた。
1 火生: 不動明王が三昧に入って身から火焔を出し、その火で悪魔を焼滅すること。
2 三昧: 心が統一され、安定した状態。
3 菩提心: 悟りを求め仏道を行おうとする心。密教で、悟りの根源的な心。



《大菩提心を振い起こして火中に入り、自他一切の成仏を願う。》 出発位置は、南にある二ヵ所の門で、紅白のテープが巻かれた2本の棒の間に、筵(むしろ)に盛られた塩が置いてある。
先達が塩が盛られた八方を持ち、先頭に立つ。渡火先達は一番大変な役である。
渡火先達が出発ゲートの塩を踏んだ後、前に進み、まだ煙と炎がくすぶる中を塩をまきながら渡火を始めた。



《大智火にふれることに依り一切の罪障を焼き滅ぼす。》 山伏の渡火のあと参詣信徒一同の渡火が始まった。最初は白装束に身を固めた男女の信者たちである。
腰に手を当てて歩く者、合掌して歩く人など、様々である。
    


道場に入場を許されているのが白装束の信徒ですが、白装束の背中に南無大師遍照金剛・同行二人の文字とかがみえる。遍路装束のようであり、大師信仰と修験道が融合しています。



一般の信者や火行希望者の渡火がはじまった。
   


行者さんたちも応援します。



火渡りのあと、薬王院の大導師から祝福を受けます。
   


会場で梵天札が授与されます。
   


いただいてきた「梵天札」です。



「行」ということなので、厳かな雰囲気の中行われて、参加していて本当に浄められた心地がしました。
貴重な経験でした。
やはり、東日本のの巨大地震の被災者の方々に対する気持ちが常にありましたね。
もう、これ以上の災難は止めにして欲しい。切実に思います。









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関東36不動霊場めぐり

東京都八王子市高尾町2177
2011.3.13 参詣

京王線「高尾山口」ちかく
自動車祈祷殿広場

高尾山薬王院・火渡り祭

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