「駄目人間について考える」

戻る


 駄目人間、という言葉がある。辞書に載っているかどうかは、手元に辞書が無かったので調べていない。いや、押入れのどこかにはあった気もするのだけれど、なかった気もするのでなかったことにする。その方が楽だし。

 とにかく、辞書とか国語辞典とか大辞林とか広辞苑とか現代用語の基礎辞典とかに載っているかどうかはともかく、世間で一般的に使われている言葉であるのは確かであろう。
 試しに2003年4月現在で多分一般的に最強であると言われている検索エンジンGoogleで「駄目人間」というキーワードで検索してみると、約31,500件のヒットがあった。これを「ダメ人間」との複合検索に切りかえると、約92,100件まで跳ね上がる。一般的な言葉と言えよう。

 その「駄目人間」の意味はと言えば、文字通り「駄目」な「人間」という意味だ。「だめ」でも「ダメ」でも「駄目」でもなんでもいいのであるが、とにかく駄目っぽい人のことだ。やるべきことをやらなかったり、行動や判断基準がちょっとどうかと思われてしまったり、そんな感じの人のことだ。
 考えてみればそんな人に関するサイトが、自薦他薦を問わず90,000件もあるのはちょっとどうかと思うべきなのかもしれない。こんなことで、日本はいいのか。とはそんなにも思ってないのだけれど。

 さてそんなことを踏まえつつ、さきのサイトを見てみると、自らを駄目人間と評する人の多いことに気付く。実は昔からそのことは知っていたので、改めてはあんまり見てなかったりするのはこの際置いておく。いや、面倒だし。

 その自分のことを駄目人間だと称する人達の記述を読むといくつかのパターンがあるのだが、その一つに「別にそんな駄目やないやん」などといきなり下手な関西弁になって突っ込みを入れたくなるようなものがかなりの割合で存在する。
 「俺、こんなことしちゃったよ」みたいな自慢というか単なる失敗談を語っているだけの場合だ。「あぁ俺って駄目駄目」とか自己を卑下しつつ「そんなことは無いよ」という言葉を待っているような、そんなケースだ。
 よくあるような仕事きつい自慢とか徹夜作業自慢とかそんな感じの、本人が語りたいみたいだから語らせておいてあげましょうね、はいはい。みたいな感じの、久々に会った知人に延々聞かされてしまったりする愚痴みたいな、そんな類の話である。

 もっともそのケースでも本人が本当に駄目だと思いこんでいる場合もあるのだろうが、今まで数々の駄目っぽい人を見てきた経験から言わせて頂くと、そんなのは本当に駄目なのではなくって、単にちょっと駄目っぽいだけである。その程度のことで凄いと思ってしまうのであれば、それは世間知らずである。「井の中の蛙、大海を知らず」というといい意味だから、ちょっと違うのだけれど、まぁ感じとしては一番近い気がする。

 本当に駄目な奴ってのは、そんなもんじゃないのである。10人に聞いてみたら11人が駄目出しをしてしまうような奴だ。そんな奴、そんないないなどと思うのは素人の浅はかさで、まぁそんな玄人になりたくないというのはともかく、実際にそういう奴は存在している。しかも、そういう奴に限って自覚症状がなかったりするのだ。
 そんな駄目人間評論家としては、駄目人間ぶってwebサイトを更新してるくらいなら、本当に駄目っぽい人の爪の垢でも煎じて飲め、と言いたいところだ。本当に見習われても困るし、そんな人ばっかり増えても仕方ないのだけれど。というか、それ以前に駄目人間評論家ってなんだ。

 とにかく、そんな風に「自己陶酔型自称駄目人間風ちょい駄目程度の人」の記述なんかを見ていて、駄目な奴ってのはそんなもんじゃないんだよ、とか思っていたのであるが。
 思っていたのだが。

 最近自身を振りかえって見ると、どうやら自分がその駄目っぽい人のカテゴリーに属しているような気がしてならない。
 ほら、別に普通だよね。会社辞めて3ヶ月ちょっと遊んでるくらいなのはさ。

 その3ヶ月の間にやったことといえば、ずっと部屋に篭ってネットゲームで遊んでたとか、毎日飲んだくれてたとか、週に一回くらいしか家から出ないで引きこもってたとか、その週一回のお出かけがほとんど食料品の買い出しと本屋に行くだけだったとか、友達からも連絡とか遊びの誘いがほとんど来なかったとか、実は退社は自己都合じゃなくてリストラだったとか、ずっと就職活動もしなかったとか、まだ仕事も探してないとかも、そんな駄目じゃなくって、まぁ普通の範囲に入るよね。ね。ね?

 駄目?


前へ戻る次へ