たこ踊りポルシェ事件

93年12月

この頃は友人同士で走ることが多かったが、毎週水曜日の午前中(仕事の関係で日曜は走れなくなった)だけは単独で黙々とパープルラインを走っておりました。で、いつだったかそんな平日の静かな朝に走りに行くと、雑誌の取材か何かでチューンド・ポルシェ911が中腹の駐車場で撮影&テスト走行をしていたのでした。

その駐車場というのはちょうどパープルラインの起点になっているところで、1本走ってはこの駐車場でUターンして、また走るというような場所なのですが、自分が4本目の走行に出ようとしたときに何をとち狂ったか、今までなりを潜めていたポルシェが派手なスキール音を鳴らして自分の後ろに並ぶじゃないですか。それを見送る5名ほどのスタッフは「あ〜ぁ あんなボロ86いじめてしょうがないなぁ」って感じでニヤニヤしてます。

そのスタッフの態度と、峠にレーシングスーツまで着てサングラスを掛けた勘違いドライバーに対しこちらの闘争心もボーボーに火がつき、露骨にアクセルを煽った後、クラクションを1回鳴らし猛スタートしました。最初のコーナーまでの長い直線はアクセルを踏む右足に全体重をかけて4速7500rpmまでひっぱるが、バックミラーにはポルシェのバンパー、ライト部は見えず、ボンネットから上の運転席が映し出されています。つまりそれだけ接近して煽られているわけです。

これを見て第一コーナーをいつもの進入速度×120%で進入し再びバックミラーを見ると対向車線を大きくはみ出し、たこ踊りしているポルシェが‥。うむむむぅ‥、なんなんでしょ‥。直線が少なく中速コーナーが中心のパープルではコーナーを1つ抜けるごとにたこ踊りポルシェの姿はどんどん小さくなりやがて見えなくなりました。

こちらが上のUターン地点をUターンしてもまだ現れず、こうなりゃ徹底的に大差をつけて中腹の駐車場まで戻ろうと思い+1速の安全余裕モードで走っていたら「どんぶりコーナー」付近でたこ踊りポルシェはスピンでもしたのか、こんな途中でUターンしてるじゃないですか。後ろから迫る自分に気づいたのか道の真中を抜かれないように塞ぐと、例のたこ踊りで必死にコーナーを抜けていきます。(多分本人は「俺のドリフトを見ろ〜!」ってな感じだったのかな?)このまま抜けずに彼が先行したまま駐車場に戻るのも癪なので、何とか抜こうと右に左に車体を振りプレッシャーをかけると、ポルシェもそれにあわせて抜かせまいと車体を振ってくる。

バックミラーでこちらを確認しながらコーナーを抜け、左右に車体を振るのだから非常に危険な運転です。おそらくこの調子じゃまたスピンするだろうと思い心持ち車間をあけた途端、案の定ポルシェは、左コーナーの途中で、これまでにない大たこ踊り大会を見せ大きく車体を左右に振ると、車の後ろ側から岩壁に激突、横転するほど後部が浮き上がりフロントガラスがあたり一面に飛び散った後、パタンって感じで止まりました。

後ろで一部始終を見ていた自分は止まって声を掛けようかな、と一瞬思ったが、こんな身勝手な連中に巻き込まれたら事故を自分のせいにされそうだなぁ、と咄嗟に判断しポルシェの横を抜けると、そのまま中腹の駐車場まで止まらず一気に駆け降りました。

中腹の駐車場には入らず、そのまま路肩に停車して「おたくのポルシェ、途中で事故ってますよ〜」と一言告げて山を降りました。あの時のキョトンとしながらも、数秒後に事態を把握し慌てるスタッフの顔が妙に印象的だったなぁ。まさに窮鼠、猫を噛むって感じ。しかしあのチューンド・ポルシェの修理費用は果たしていくら係ったんでしょ?物理的ショックもそうだけど、ボロ86に負けたという精神的ショックのほうが大きいんじゃないかなぁ。

ちなみにこの頃は週に3日以上はパープルで走っていたことと、若さゆえの無謀からか、自己最高タイムを叩き出しており、ここで走る車の中でも一目置かれる存在にまで成長していたTORATINなのでした。

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