■■ なりゆきお絵描きコラム ■■


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NEW!PAGE-2更新(20/Mar/1999)

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輪郭線を観る    (13/Sep/1998)

このコラムでいう「絵」とは専ら線画の事を指します。まず始めに、輪郭線というものについて考えてみます。

目の前に左手を広げて見てください。視野の中に収まっている部分の輪郭を注意深くゆっくり目でなぞってみましょう。両目で見るとはっきりと見ることが出来ないので必ず片目で見てください。手首の左側から始めた場合、親指→人差し指→中指→薬指→小指と指先からそのつけ根、また指先、を繰り返して右側の手首まで戻って来ます。
この軌跡が輪郭線です。あたりまえ?(^_^;)
 殆どの人は普段絵を描く時でさえ、これほどじっくりと手を観察することはまず無いはずです。(よね?) もう一度注意深くやってみましょう。漠然と記憶している手、指のイメージより、ずっと複雑なカーブの組み合わせで輪郭線が形成されていることがわかリます。
「そうでもないけど…」と、感じる人はもう、かなり絵の描ける人なのでこのコラムは不要です(^_^;) (ここで言う「絵の描ける人」とは「観察→把握→描出」の流れ作業を行う「訓練」を十分積んだ人のことです。正しく訓練を積めば、ほぼ誰にでもこのレベルまでたどり着けます。この事についてはいずれ)

 輪郭線は観察者の視点に対して傾きが一致する面の接点の連続したもの、と言うことができます。その線に厚みや、太さは無いはずです。
左手に目を戻してください。指のすき間に何かが見えていますね。キーボードかモニターか、とにかくその指の間から見えているモノにも輪郭線があります。それらの輪郭線と手の輪郭線の違いがわかるでしょうか。一方は人工的に作られた固形物であり、一方は筋肉や間接の動きによって様々に形を変える「生きている」物体です。
その違いを観察によって見いだし、紙の上に描く事が出来るでしょうか。
手をゆっくり動かして、輪郭線がどのように変化するかをよく見てください。立体として認識する必要はありません。輪郭線だけに注意を集中してください。
指を少し曲げたり、伸ばしたりしてみても面白いでしょう。複雑なラインの変化をじっくり観察してください。

 紙を用意して線だけで手を描いてみましょう。描くのは輪郭線だけです。線に強弱を付けず、立体感も、骨格の構造も考えず、目に見える線だけの、いわば抜き型を描きます。
この作業を繰り返すことで、概念として頭に入っている「手」のイメージを取り去り、純粋に見たままの形のみを描き出す訓練をします。

 ほとんどの場合、形が上手く描けないのは、その形が解ってないからです。既成概念(思いこみ)や、色、表面の質感、立体感といった雑多な情報が形の正確な把握を妨げています。(現段階では)線で描けない情報に関しては一切無視し、「抜き型」のみに注目するようにしましょう。

 普段から身の回りのものをこの「抜き型」として観るようにして、形に対する感覚を磨きましょう。余分な情報を上手く省き、必要な部分のみに注目することで物事の理解はずっと優しいものになります。

描く作業の前に、まず、描くべき対象を正しく観て、そして理解することが大切なのです。

参考図書    『内なる画家の眼』  B.エドワーズ  エルテ出版  

      『脳の右側で描け』      同上    マール社  

  改訂新版『脳の右側で描け』    同上  エルテ出版社  

小指の想い…で   (中級編)    (18/Sep/1998)

手に関しては専門書もいろいろあるので、参考にしながら、自分の手とか写真とかを観ながら、ひたすら練習してみましょう。 ある程度手が描けるようになったとして、(普通はそう簡単には描けるようになりませんが)比較的、見落としがちな事について少し触れてみます。

hand Fig-1を見てください。軽く手を握った図です。小指が薬指の下に少しもぐりこむようになっているのが解るでしょうか。実際にやってみてください。詳しいことは骨格の構造を専門書などで見てもらうとして、とにかく小指が曲ってゆこうとするラインと薬指のそれが交錯する形になっているので強く握ればそれだけ薬指に小指が押しつけられる形になります。(Fig-2)これは人差し指と中指にも同じことが起きています。

モノを軽く握るときの(薬指が小指の場所を取ってしまって)小指が浮いている状態(Fig-3)では、なんとなく小指だけがそっぽを向いている様にも見えますが、角度を変えて見ると、その流れの先はちゃんと手首に向かっている事が解ります。(Fig-4)

何が言いたいかというと(^_^;)図で示した水色の部分案外忘れられやすいということです。この部分をしっかり描かないとモノを握ってる感じにはなりません。モノを握るときは指が内側に向かい、水色の部分が外側から包み込むように押し上げることで、しっかりと固定できるわけです。

指は掌に平行には付いていません。曲げると内側に、内側に入ってゆこうとします。この指向と言うか流れを意識して描くと、例えば剣の握りとか、拳銃の握りなどが、さらに説得力を持つものになるかもしれません。

その際に指同士が場所を取り合い、互いに押しつけあって形が変化し、内部に力がたまっていることも意識するとよいでしょう。この内的な「力」を描写出来ればアクションの力感表現などもかなり違ってくると思います。


最後に落書きの中からいくつか抜粋してみました。

      落書き ←click

補足ですが、女性の手はとにかく綺麗に描く事です。柔らかい部分と、固い部分のメリハリ、滑らかなカーブを上手く描いてください。絵全体の印象も手の描き方でかなり変わると思います。手に表情を持たせることも大切。手の綺麗なモデルの写真を参考に使うといいでしょう。あ、もし貴方が女性で、しかも綺麗な手の持ち主でしたら、写真は要りません(^^;)




流れで描く〜シルエットラインによる描法   (中、上級編)    (20/oct/1998)

 丁寧な絵で細部の描写はそこそこ出来てるのにもかかわらず、今一つポーズ、構図がしっくりこない、不自然さが残る、絵の張り(主張)が今一つとかいう絵があったとします。

そういう絵はシルエットにした場合のフォルム、ラインが明確でないことが多いのです。
シルエット(抜き型)のフォルムやラインの流れが明確であれば、絵全体の見栄えはかなり違ってきます。 また、シルエットが美しく、明確であれば、それだけでも絵は成り立ってしまうものとも言えます。

シルエットだけでも、その人物の性格や感情を表現することは可能です。他の情報が無いので難しいのですが、その分表現としての力は強くなる(はず)です。もっとも、表現の目的が無いことには始まりません。無為な絵というものは手の訓練という意味があるぐらいで、描くに値しません。絵の表現目的を決めてから取り掛かるようすると無駄に時間を浪費しなくて済みます(楽しみで描く分には気にしない)。

 何気ないポーズであっても、キャラクターの年齢、性別、性格、感情(気分)によって違いが出るはずです。というより、違いが判るように描くべきです。

 最初に描きたいポーズイメージを固めます。手を適当に動かしてたらたまたま上手くいった、なんてのは練習にはなりませんので、まずそこをはっきりさせます。 想像だけではイメージが固まらないという場合は絵や写真を観ながら描きましょう。この時も一旦観て、記憶で描くのが良いでしょう。(スポーツ写真等がお薦め)

 滑りの良い紙に、細い線が引ける鉛筆やシャープペン、もしくは水彩ボールペンなどで流れを大切にして薄くアタリを取ります。出来るだけ淀みない線を素早く引き、数回で(出来れば一発で…)決める様にします。(集中力を養う意味でも)

手首を使わず腕全体で紙の上に鉛筆を滑らせるように引くのがコツです(肘で描くように意識するとよいです)
アタリでは細部は気にせず形やバランスも二の次で、シルエットの流れを重視してください。
どんなポーズにも(その現れ方に差はありますが)何らかの流れ(意志)、方向性(主張)が必ず存在します。(それが無生物であっても、人工的に作られたものである以上、その形状に作り手の意志や主張は必ずあります。) それを見い出し、強調することで絵で描くべきところがより明確になり、判り易い表現となります。(←ここが重要)
途中で上手くいかなくなったら、その絵は止めて新しく描き直しましょう。線は直せば直しただけ死んでいきます。無駄に線を重ねる必要はありません。

アタリを取る

アタリが取れたら今度は少し強めの線でやや丁寧にラインを起します。ここでも線の流れ、フォルム等に気を使って、出来るだけ絵全体を観ながら線を引きます。鉛筆の先付近だけを見ているとバランスが崩れやすいので注意してください。
コーナリングで綺麗なライン取りをするためには遠くを見るのと同じですね(そうか?)

ラインを起す

 一般的にアニメーターが原画を描く際にはシルエット形状の変化で動きをつけます。 特にアクションのようにタイミングが速く、形の変化が大きい場合は観客の目に残像として残るのはほぼシルエットだけですから、このシルエットの描き方次第で動きの善し悪しがはっきりと決まってしまいます。

 この描き方の利点はとにかく速く描けることです。しかもバランスが多少崩れても絵として見栄えがそれほど落ちないので「下手」に見えにくい。弱点としては、描き慣らしてゆくとデザイン的な方向に流れやすく、量感が不足しがちで中身の希薄な絵になりやすいということです。(ただ、あえてそういうスタイルを取る。というのもありでしょう)
一般的にはラフの段階でシルエットで見た場合のフォルムや流れを効果的に作り出し、それから衣服の皺や影等のディテールに移行するのが要領の良いやり方です。

いくつか描いてみたものを置いておきます。(下の■をクリック)
まとめるためにトレスし直しているので線の勢いは若干死んでいますが、脚(と足)の表情には日頃から割と気を使っているので、その辺も注目してみてください。

       

参考図書    デッサンの眼とことば  T.S.ジェイコブズ   エルテ出版    

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