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70歳、自転車ひとり旅

川越(埼玉)〜函館(北海道)


荒川河川敷に近い公園

 サイクリングをしていたある日、ふと北海道行きを思いついた。「そうだ!大好物のカニを食べに北海道まで自転車で行ってやろう」 この全くの思いつきが引き金となり、70歳の私が川越(埼玉県)〜函館(北海道)間往復、全走行距離2032kmを自転車で完走した。
                       

荒川河川敷の自転車道路

 思いつきプランとはいっても成算がまったくなかったわけでは勿論ない。自転車は子供の頃から乗り慣れた乗り物だったし、田舎での高校3年間は片道30分くらいかけて毎日自転車で通学していた。メタボ対策として久しぶりに乗ったときも乗れて当たり前という感覚だった。ただ脚力の方は弱ってきていたから河川敷での練習中、ヘルメットを被った若いシクロツーリストに簡単に追い抜かれみるみるうちに遠ざかって行く彼らの後ろ姿をいつも見送っていた。

青春真っ只中を過ごした日吉

 不思議なことに自転車に乗っていると若い頃の自分に戻ったような気分になる。心のどこかにまだ少年時代の自分が居るのかも知れない。地面に写る影も昔とほとんど変わっていない。速度さえマイペースに保てば地の果てまでも行けそうな気分になる。この気分は週末1日100km、200kmという距離をこなしているうちに確信へと変わっていった。


 性格は徹底したプラス思考。好き嫌いがなく何でも食べることができるし、どこででも寝ることができる。そういうことで思いついてから実行に移すまでは早かった。「よし、70歳になる今度の誕生日の翌日が良い」と9月24日を出発日と決め練習に一層力を入れた。出発の2週間前になって練習を終えて帰る途中肋骨を2本折るというアクシデントに見舞われたが計画は予定通り実行することにした。
 当初、大まかなルートとしては川越(埼玉県)の自宅から国道16号と国道6号を乗り継いで土浦(茨城県)まで行き、そのまま国道6号で太平洋沿岸伝いに仙台(宮城県)まで北上、そこから国道4号にスイッチして内陸を通り盛岡(岩手県)を経由して青森(青森県)まで行き、青函連絡船に乗って函館(北海道)に到着する。帰路も同じコースを逆方向に辿るというものだった。

カニ飾りのある店、函館

 また、当初の計画では目的地は函館ではなく札幌だった。ところがそれを函館止まりにせざるを得ない事情が生じた。実は、旅費の一部をキャッシュカードでまかなう予定だったのだが勘違いをしてキャッシュカードを持っていっていなかったのだ。この勘違いが今度の旅行に大きく影響することになり、見物したい場所をあきらめさせ、食べたいものを我慢させ、雨天でも先を急がせることになった。旅行中デジタルカメラで撮った写真は実に500枚にものぼるのだが、そのほとんどが国道から眺める景色になってしまった。なお、実際には復路は往路とは違う道を辿ることになる。具体的には十和田(青森県)までは往きと同じ道を戻り、そこから国道45号で八戸(青森県)へ向かい、三陸海岸伝いに南下して仙台に入り、今度は国道4号で内陸伝いに福島(福島県)、宇都宮(栃木県)を経由して帰宅するというものだ。だからルートとしては南北に8の字を描く形となり往きと帰りは全く違う道を辿ることになる。

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