|
たびたび処分してきたにもかかわらす、 ホコリかぶったり、日に焼けたりしながら 私についてきた金魚のふんみたいな本たちを、 ご紹介して行こうと思います。 来ればよいのだ春などは 著者:大石芳野 発行:1973年5月1日 定価:1,500円 お問い合わせ:東京都目黒区中町1-26-22 発行者:斉藤慎爾 発行所:深夜叢書社 東京都杉並区阿佐ヶ谷北3-19-5 印刷:ライト印刷株式会社 字と言葉:朝倉勇 英訳:清水啓一郎 デザイン・レイアウト:吉田匡寛 「3月の虫干し書棚」が写真集になったきっかけが、 この大石芳野さんの「来ればよいのだ春などは」でした。 ふと、この写真集を見たくなって探しはじめたら 写真集の一部が出てきて3月は写真集になったというわけです。 この「来ればよいのだ春などは」を購入したのは 朝倉勇さんの詩への興味でした。 朝倉さんは、当時ライトパブリシティというデザイン会社で ヤマハピアノなどの広告コピーをお書きになっていて とても好きなコピーライターだったものですから。 当時、写真家・大石芳野さんを知っていたかと言うと はっきりした記憶がありません。 その後、カンボジアの子どもを撮った作品やエッセイなど 話題作を発表して注目を集めたわけですが。 もちろん、その頃は同姓でもあり知ることになります。 和服の外人女性(?)が、帯を下着をはだけ、裾を乱し、 冬の浅間山麓を狂ったように走り回っている。 そんな写真の数々で構成され、後半の方に わたしの天領 差しあげようと はるばる歩いて来たけれど 誰もいません 草ばかり 妾を花と思し召せ 召して香を聞き給へ うらうらと 來ればよいのだ春などは ひとはひと 去ればよいのだ厭きたなら 棄てつづけ まだ残る たねひとつ はらわたの 苦きをおもへ という朝倉さんの筆にいる詩が配されています。 大石さんは「この写真集についての私の小さな辞書」というあと書きで 女・わたし、うそつき、浅間山・真っ黒いくせに白く化けている 夕暮れ・すすり泣き 寒さ・やさしさの変型 着物・女を盗み取る 花・生きようと思った 香・まやかしなど、全部で25の名刺をあげ、 これらの名詞を、私は「撮る」という動詞で表現したかったのです。 と書いており、表現活動をする若者が抱えていた 可能性と希望への熱い思いなど、前途を模索するという 時代の持っていた息吹が伝わってくる写真集です。 最新へ戻る © share a gift allrightsre reserved |