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たびたび処分してきたにもかかわらす、 ホコリかぶったり、日に焼けたりしながら 私についてきた金魚のふんみたいな本たちを、 ご紹介して行こうと思います。 憂魂 高倉健 編者:横尾忠則 協力:東映株式会社 発行者:矢牧一宏 発行所:株式会社都市出版社 東京都渋谷区代々木3-31-12 代々木ハイツ408号 印刷:株式会社細川活版所 製本:宮田製本所 発行:昭和46年(1971)5月20日 印刷 昭和46年(1971)6月5日 初版発行 定価:2,500円 腰巻の裏側には、 『横尾氏が数年の歳月と心血を注いで作り上げた高倉健を主題にする華麗なシ ネロマン!ここに躍動し憂魂する高倉健とはなにか? 横尾忠則のこの恐るべき 執念とはなにか?』と言うコピーがある。 この「憂魂」と名づけられたA4版の厚さ25ミリの本はなんといったらいいのだ ろうか。従来のスターの写真集とはまったくおもむきが違う。しかし、スター ・高倉健の写真集といえば間違えないと思うものの、それもなにか似つかわし くない。 冒頭は横尾忠則氏のポスターやイラストと高倉健のカラー写真がコマ割でレイ アウトされている。 次に、身長―― 1968年:80です、1メーター。 1971年:いゃー 同じですね。 というような、1968年と1971年に同じ質問をし、それに高倉健が答えるインタ ビュー。それに、昭和6年の誕生から昭和45年までの高倉健・年譜。 高倉健の赤ん坊から少年期、青年期の写真が並び、以後は怒とうのモノクロ写 真が続く。映画の一場面のスチール写真、映画館のウインドー、ロケ風景。そ の中に時々これもモノクロの横尾氏の作品。 そして後半のページには座敷いっぱいにひろげられた印画紙と横尾氏と編集ス タッフ。続いて自宅全焼(妻は江利チエミ)の記事とコメント。 従来のスターの写真集のスタイルを踏襲しながらも、誌面から受ける感じはま ったく違うものだ。もちろん一点一点の写真も完成度なぞ無視の乱雑さだ。 これは、"高倉健命"という人以外にはこの怒涛のモノクロ写真群は、写真によ る平手うちだ。あの時代の裏にひそんでいた暴力性すら感じさせる。 映画スターの多くのファンのためにつくられた写真集ではない。 横尾忠則という一人のファンのためだけにつくられた、まれに見る贅沢な写真集と いっていいのかもしれない。 横尾さんにぞっこんの若いときに買ったものだが、購入時の記憶がまったくない。 もしかしたら新刊書ではなく、何年か後に神保町あたりで古書で買ったものかも しれない。長年じっくり見ることもない写真集だが、いつも大事そうに本箱の一 番下の段にある。 最新へ戻る © share a gift allrightsre reserved |