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見出し1


たびたび処分してきたにもかかわらす、
ホコリかぶったり、日に焼けたりしながら
私についてきた金魚のふんみたいな本たちを、
ご紹介して行こうと思います。


おしゃべりな たまごやき

寺村輝夫さく 長新太え
定価:表記なし
発行:1967年3月1日 第2刷
発行所:福音館書店
東京都千代田区三崎町1-1-9
印刷:精興社
製本:清美堂

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長新太さんの絵が大好きで、何回、同じものを見てもあきません。
そのたびに何か発見があるからということではなく、発見とかそういう生産 的というようなことではなく、潔い間柄なのであります。
なんて、私の浅はかないい草です。
さて、ここにご紹介する
「おしゃべりな たまごやき」は、第5回文藝漫画賞受賞作品で、今の作風にな る前の作品です。(今の作風のサンプルとして 1972年に改訂された絵の一部を 下記に掲載しておきます)
棒のような体に頭や手足がついているちょうどロボットのようなカクカクとし た線で仕上げられた様式的な画風の作品です。

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この絵本は、福音館書店が幼稚園を通して月刊誌として販売していた「こども のとも」の一冊として出し、後にハードカバーで傑作集として出版されたもの です。この作品が発表されたのが、資料によると1959年とありますから私の持 っているこの本は8年後のものというわけです。
この飛び切り完成された抽象的な画風の冷たさを、独特の手業の残るマチエー ルでカバーしていると思うのですが、作者にとってちょっと息苦しくなったん でしょうか。この作品の4年後から自由奔放な作風に変わっていきます。
一見、私でも描けると思わせる、子どもが書きなぐったようなとても素朴な画 風、今でいう"へたうま"にがらっと画風を変えます。そこには、現実の文明に 対する批判精神を持ちながら、優しいユーモアをたたえるニューヨークの漫画 家、ジェイムス・サーバーの影響が見られるといいます。

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ストーリーは寺村輝夫さんで、「王さまの耳はロバの耳」と同様などんでん返 し的な結末をもったナンセンスなお話です。お城の中を俯瞰する視点ですべて が描かれています。このへんも王さまの秘密を覗き見しているようで、ちょっ とドキドキしてしまうという計算がされているのでしょうか。
さて、自由奔放な画風になってからの活躍はめざましく「ぴかくんめをまわす」 「ぼくのくれよん」「ごろごろにーゃん」「キャベツくん」「ぞうのたまごのたま ごやき」などへとつながっていくわけですが、2005年の夏、長さんの死で突然 途絶えることになります。

新作がみられなくなったことは、とても寂しくて残念なのですが、まだまだ見 たことのない作品が山のようにあるようです。それをゆっくりと一冊ずつ楽しん でいこう、なんて強がりを言っておきます。トホホホ‥‥


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