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たびたび処分してきたにもかかわらす、 ホコリかぶったり、日に焼けたりしながら 私についてきた金魚のふんみたいな本たちを、 ご紹介して行こうと思います。 土屋耕一のガラクタ箱 著者 土屋耕一 発行者 小川茂男 発行所 誠文堂新光社 東京都千代田区神田錦町1丁目5番地 印刷:社陵印刷KK 製本:藤沢製本KK 1975年1月31日発行 装丁・写真・構成 浅葉克己 定価:1,800円 君の瞳は10000ボルト(資生堂)や こんにちは土曜日くん。(伊勢丹)のキャッチフレーズ。 「軽い機敏の仔猫何匹いるか」という、 上から読んでも、下から読んでも同じという回文集。 知る人ぞ知る、コピーライターの土屋耕一さんのエッセイ集です。 サイズはタテ20cmヨコ158cm、厚さ2cmの箱入りです。 装丁、写真は浅葉克己さんです。 ことば遊びの話、広告の話、コピーの話などな、 比較的短いエッセイがならび、 エッセイ集というよりコラム集といった風情です。 掲載誌も、今はなき「話の特集」をはじめ「小説現代」や「婦人公論」、 「宣伝会議」などの広告関係の雑誌と幅広く集められています。 あとがきで発表当時から十数年たっているものもありますから、 鮮度が、とご心配していますが、そんなご心配は無用の新鮮さです。 今から40年前のものも混じっているのに、です。 その中のひとつに、「社長さんへの手紙」というエッセイがあります。 コピーライターを含め広告屋は企業などから注文をいただくところから仕事がスタートします。 そこで、土屋さんのお仕事は企業側の出す課題に対して 様々なアイデアを提出するわけです。 さて、そこでまずそのアイデアが面白いと思っても、 入り口である課長さんの頭の中には、次長、部長、取締役や 社長の顔が次々に浮かんできます。 で、すばやく自身の立場などを計算する。 そして「ダメでしょうなあ」となる。 これを土屋さんは、「ビキニデハダカ型」と名づけています。 『まず、相手のプランをきいて ビ=ビックリする。 キ=キョーミを抱く。 ニ=ニヤリとする。いけそうに思う。 デ=デモ、と考える。障害はないか。 ハ=ハッとする。怖い顔を思い出す。 ダ=ダメ。余計なことはしないに限る。 カ=カエス。案をお返しする。 「大へん面白いのですが、どうも、といって」 で、「ビキニデハダカ」は保守的で、保身的で、一切の冒険を排除する ヌルマ湯的な思想であります』 この文章をお書きになったのが1965年ですから、 ざっと40年近く、ちーとも変わっていないでしょ、今と。 発想の転換だ組織の活性化などと言う掛け声とは裏腹に、です。 もしかしたら今の方が、状況はもっと悪くなっているかもしれませんね、希望のないぶん。 こんな、ちょっとシリアスなお話も飄々と 明るくユーモラスに書くところが土屋文章のうれしいところです。 これからも、時々拾い読みするだろう長年の友の一冊であります。 最新へ戻る © share a gift allrightsre reserved |