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見出し1


たびたび処分してきたにもかかわらす、
ホコリかぶったり、日に焼けたりしながら
私についてきた金魚のふんみたいな本たちを、
ご紹介して行こうと思います。

日本劇場写真帖

写真:森山大道
文:寺山修司
定価:980円
発行:昭和43年(1968年)7月10日初版発行
発行人:石川則和
発行所:株式会社室町書房
東京都渋谷区桜丘16丸西ビル25号
印刷・製版:株式会社富士製版印刷
表紙印刷:明和印刷工業株式会社
製本・制函:森下製本所
用紙:文祥堂用紙店
装幀:辰巳四郎


日本

屋根裏からフジプロマイドという
モノクロ写真用の印画紙の箱が数個見つかりました。
それは、その昔、自分の部屋を暗室にして
プリントした写真の残骸でした。
浅草、上野、あたりを徘徊していたころの写真です。
ガラスでかこまれた屋台の焼きそばの鉄板上に転がる
丸ごとのキャベツとカラカラ乾燥した焼そばの残骸。
きっとこれは早朝の浅草の風景ではないかと思われる1枚です。
少々荒れ気味は写真にカラー鉛筆で丸をつけ、
もう少し焼きこむなどの指示を入れ、
この一枚への執心振りがうかがえます。

恥ずかしい思い出ですが、
伸ばし機まで買い込み写真にのめりこんだのは
当時脚光を浴びはじめていた、
森山大道氏や中平卓真氏の衝撃的な影響でした。
今まで見たこともなかった、粗い粒子とブレた画面、
周到な計算を感じさせないトリミングや構成。
何が写されたいるのかわからない写真の数々。
時代の空気の真っ只中で、あさはかにも「私にも撮れるぞ」、
と錯覚をしたのに違いありません。

東京2 東京3
東京4 東京5

寺山修司氏の文、「日本劇場 芝居小屋の外で観た地獄の四幕」と
「浪花節 新宿お七」と森山大道氏の写真で構成。
ダンボールの函には、ゴム版(?)で書名等が刻印されています。
アパートの内部、芝居小屋、新宿の繁華街や裏通り、
ストリップ劇場などなど。
昭和40年ごろの風景が、無造作に切り取られた写真の数々に、
すべての現象や表現にノーと
拒否の姿勢を現す若者たちの熱気が伝わってきます。
現代の閉塞感とは違う、希望への光を求めての、です。
当時のあの荒々しく衝撃をもたらした写真の一枚一枚が、
36年後の今、郷愁感を漂わすセンチメンタルな
一枚一枚に変わってしまった月日の経過に戸惑いを感じます。

最近、森山大道氏や中平卓真氏たちの写真が
今また注目をあつめているようですが、
若い人たちには、この一枚一枚がどう映っているのでしょうか?
とても興味のあるところです。


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