2013.7.28
出入国審査にパスしない哀れな男

 今朝の新聞の記事。"日本の空港で、出入国審査で審査を受けようとする人物がパスポート写真の人物と同一かどうかを識別する機械の導入テストをしたところ、誤判定が17%もあったのでまだ実用化に至らない" というものであった。
指紋や目の網膜の毛細血管のパターンを用いた認証システムは実用化されているそうだが、なぜ顔を用いるのだろうか? パスポートや免許証に載っている自分の顔写真に満足している人はどれだけ居るだろうか? お見合い用の写真なら専門の写真館で光の具合や顔の向きなどを慎重に決めてもらって撮影したいところだが。
 先日、相方が教えてくれた。
”このMacのソフトっておもしろいよ、あなたが写っている写真を検索してみたらAさんが写っている写真も検索してくるのよ!” ”でも、あなたってAさんに似てるってことなのね” 
そう言われて相方のMacが検索したAさんの写真を見てみると、なんとなく許せる気がしてきた。
続いて相方、”Bさんの写っている写真を検索してみたら、機関車トーマスの写真が出て来たのよ!” 
おもわず検索したMacを褒めてあげたくなってしまった。
 そんなことを考えると、この出入国審査のアイデアはどこか間が抜けているように感じる。チャップリンなら審査にパスしようと必死にパスポートの写真と同じ人相を作ろうとする哀れな男を演じるに違いない。 写真の画像データが同一であるかを調べるのは厳格な作業である。一方、人相が似ているかどうかを判定するのは曖昧な作業である。機械に曖昧な作業をさせて結果に納得する人は居るのだろうか? 出入国審査は写真の人物と同一かどうかを判定したいはずだが、判定率が99.99....何%ならOKを出すつもりなのだろうか?その数値は審査する側にとっても、される側にとっても100%でなければ意味が無い。 新聞も記事にするなら判定率の規準も世間に知らせて欲しいものだ。そして、顔を使って出入国審査するメリットも。

 ところで以前のエッセイ、 ”言語の伝達効率” に関連するが、Macのソフトの例を考えてみると、他人が写っている写真が検索されやすい人相とそうでない人相があるのではないだろうか? ”平均顔” とか ”機関車トーマス顔” のようなものかもしれない。これは視覚情報にも伝達効率のようなものがあるのかもしれないと思った次第である。

関連エッセイ:
言語の伝達効率

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