99.7.4
スプートニクスは温泉バンド!?

以前のESSAY「新しいサウンドは海の向こうから?」で紹介したスプートニクス。幼い頃に聴いて、今もはっきり覚えている「あの曲」がなんだったのか確かめようとCDを探しに行った。エレキインストのコーナーを探すのは初めてであるが、ベンチャーズを筆 頭にあるは、あるは。
スプートニクスも何枚かのコンピレーション版があったが、曲名からそれらしい曲が入っている版を買ってきた。お目当ての曲は「テルスター」という曲で、間違い なく「あ の曲」であった。めでたし、めでたし。
ところで、一緒に聴いていた相方がこのスプートニクスに異常な反応を示した。「これって温泉バンドだよ!! 子供のときに熱海に旅行に行った時の事を思い出すよ。宴会場で誰も聴いていないのに演奏しているのって侘びしいよね。」
「えっ!!?、スプートニクスが日本のどこかの温泉旅館に出演していた?…」のではないだろう。相方が聴いたのはブームもとっくに去った70年代後半とのこと。
いろいろ相方に聞いてみるのだが、どうも記憶は曖昧で、「生のバンドだったような気もするし、ジュークボックスだったような気もする。」とのこと。ジュークボックスならなんとなく判る。ジュークボックスが流行したのは60年代半ばから末である。たしかに、当時のエレキインストがそうした場所で掛かっていたのは記憶にある。当時最新のメディアであったジュークボックスは廃れるのも早かった。特に、地方の観光地では新曲に入れ替えることもされなくなり、選曲ボタンに挿入されていたボールペン書きの曲名の紙が変色していたりして、侘びしい感じが漂っていたものだ。どうも相方の聴いた「温泉バンド」とは時代が進んで「ナツメロボックスと化した遺物」のことだったようだ。
それにしても、エレキブームは遥か遠い日、日本のどこかの温泉旅館の娯楽室の片隅でスプートニクスが鳴っていたとは。想像するとなんとも可笑しい。因みに、相方は私が何度言い直しても「またスプラッターズ聴いてるの?!」と言っている。

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