2020.2.9
楽曲エッセイ:
Wooden Ships/Crosby, Stills & Nash
After The Goldrush/Neil Young ノアの方船?

 今回は2曲いっしょにとりあげようと思う。
"Wooden Ships" は1969年リリースのデビューアルバム、“Crosby, Stills & Nash*1“ に収録。
”After The Goldrush*2" は1970年リリースの3作目のソロアルバムのタイトル曲である。
いずれも半世紀前のあの時代に彼らから発せられた反核の意思表示と言われており、今や様々なブログでも評されていることと思う。
 時は1971年3月18日、区立中学の卒業謝恩会で演奏したバンドが2組あり、ひと組が "Wooden Ships" を名乗り、もう一組、自分達は "Frontiers" を名乗った。
曲を初めて聴いたのは高校2年の1973年の事であった。Wooden Shipsの最初の印象は ”ギターの格好良さ” であり、After The Goldrushは ”頼りないボーカル” であった。 前者は高校生バンドにやってみようと思わせたし(スティブン・スティルスのリードギターは難しそうだが、デイビッド・クロスビーのリズムカッティングなら練習すれば出来そうに思われた)、後者はピアノの弾き語りが出来るHT君ならやりそうだし、間奏のホルンならブラバンの経験がある誰かを誘えば出来そうに思われた。高校生にとってはこの程度の発想である。
しかしながら何を語っているのか?、我が母校にはこの曲を授業に取り上げる様な気の利いた英語の先生は居なかったので辞書と格闘した次第である。 2曲とも邦訳の歌詞カードを持っているクラスメートも居なかったので、Wooden Shipsの冒頭のスティブンとデイビッドの掛け合いでボソボソ言っているところは意味が良く判らず、After The Goldrushは難解のまま青春時代は過ぎていった。時代背景を知り、人生の失敗を重ねることによって少しづつ作者の意図が見えて来るのは文学やアートも同じであろう。
 この2曲だが、アポカリプス〜人類の終末を語っている。
”After The Goldrush" は "Wooden Ships" のアンサーソングと言えるかもしれないし、お互いに影響を受け合っていた連中であるからニールも触発されたのかもしれない。
さて、半世紀後、木の船がウィルスを封じ込めているという発想は彼らにも無かったかもしれない。


Wooden Ships

スティブン:君の笑みの意味は英語圏の人達なら解る。
デイビッド:君は対岸から来た人だって、着ているコートで判る。知りたいのは勝者は誰?ってことだ。
スティブン:ぶどうを少し分けてもらえないか?
デイビッド:ああ、僕はもう食べたから、6、7週間は持ちこたえた。
スティブン:これで僕らは生き延びるかもしれない。

木の船は波間を勝手気侭に彷徨う。
何処へ向うか判らない。
海岸線の防護服の人達のせいでこうなった。
彼らは勝手気侭な事を言っている。

人が死ぬのを見て恐怖に襲われる。
苦痛の叫びを聞くと僕らもそうするしかない。
人は死に直面して呆然となる。
置き去りにされたんだ。僕らは必要の無い人間なんだ。

子供達だけでもこの(見知らぬ)国から退避させるんだ。
遥か彼方の地で再び笑おう。
置き去りにされたんだ。僕らは必要の無い人間なんだ。

穏やかな風だ。
暖かい南風が背中を越えてゆく。
たぶん....この進路で行こう。

written by David Crosby, Paul Kantner, and Stephen Stills
from "Crosby, Stills & Nash"


After The Goldrush

夢の中に鎧武者が現れて、主君の噂しきり。
兵は浮足立ち、太鼓を打ち、空を弓で射る。
勝鬨の声は風に乗り、太陽を震わせる。
それでも、母なる大地は、1970年を生き急ぐ。
それでも、母なる大地は、今を生き急ぐ。

焼け落ちたビルの地下から、
月が登るのを見た。
再び陽の光が差し込んでも、もう元にもどせない。
頭の中で誰かのギターが泣いている。
きっと嘘に違いない。こんな筈はない。
きっと嘘に違いない。こんな筈はない。

夢の中に黄色い霞に浮かぶ、銀色の宇宙船が現れた。
どこかで子供が泣いている。
選ばれし者の周りで国旗が打ち振られる。
すべてはみんな夢の中。燃料は満ちる。
母なる大地の種は新天地をめざす。
銀色の種は新天地をめざす。

written by Neil Young
from "After The Goldrush"

*1
*2

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