2004.8.29
ノーマン・ロックウェルのこと

 今日は8月も終わりに近い涼しい雨の日曜日。図書館でイラスト関係のコーナーを通り過ぎようとした際に偶然、ノーマン・ロックウェルの名前が目に止まった。
彼はアメリカの著明なイラストレーター程度しか知らなかったのだが、初めて彼の名を知ったのは1981年の秋のこと。
PURE PRAIRIE LEAGUEというカントリーロックバンドのデビューアルバム"PURE PRAIRIE LEAGUE"のレコード*1を当時、渋谷に初めて出店したタワーレコードで手に入れたのだが、そのジャケットがとても印象的であった。
それは、年老いたカウボーイが蓄音機の前でレーベルに"Dreams Of Long Ago" ="遠い日の夢"と記されたレコード盤を手にして感傷に浸っているという情景で、よく見ると老カウボーイの目が潤んでいる。とてもいいジャケットだなあと思って、サインを探すと"Norman Rockwell"という文字が見つかったのである。
てっきりこのレコードの為に描かれたイラストだと思っていたのだが、数年後に、どうもこのジャケットと同じ作者が描いたと思しき別のイラストを何かの本で見たときに、この作者がかなり年輩のアメリカの国民的なイラストレータであると知ったのである。
そんなわけで以前から彼の事が気になっていたので、今日は目に止まった画集*2を借りて来た。
それによるとノーマン・ロックウェルは1894年生まれで、アメリカの著明な週刊誌「サタデー・イブニング・ポスト」誌の表紙を1916年から1963年まで約半世紀に渡って描いたことで知られており、1978年に没したとある。
自分が気に入っていたレコードジャケットが載っていないかとページをめくっていると、ありました!!。
それはサタデー・イブニング・ポスト誌の1927年8月13日発行の表紙だったのである。そしてジャケットタイトルの"PURE PRAIRIE LEAGUE"のロゴとレイアウトがTHE SATURDAY EVENING POST"と全く同じにしてあることが解ったのである。つまりはPURE PRAIRIE LEAGUEのデビューアルバムはアメリカ人なら誰でも知っているサタデー・イブニング・ポストの表紙にあやかったものだったのである。
それはさておき、とにかくその画集を見ていて涙が出て来てしまった。これほど癒されるイラストを自分は知らない。 その画集で彼のイラストの素晴らしさを表現している言葉を借りると、アメリカ人の何気ない日常の一瞬を描いた彼の1枚のイラストを見れば、一冊の大長篇小説を読んだのとおなじくらいの感動が込み上げてくるのである。サタデー・イブニング・ポスト誌の表紙を半世紀にも渡って飾ってきた理由も判ろうというものだ。
雨の日曜日はいい事がある。

*1:"PURE PRAIRIE LEAGUE" 1972年初版 RCA AFL1-4650 1981年再版 RCA AYL1-3719

*2:ノーマン・ロックウェル画集 監修:松本 猛 1997年初版 白泉社刊

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