尿路結石を防ぐには

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1.尿管結石が出来るわけ

 尿路結石(尿管結石)を形成するのは、シュウ酸などの物質と、カルシウムを主とするミネラル分です。
 シュウ酸は水に溶けやすい性質と、カルシウムと結合しやすい性質を持っています。シュウ酸とカルシウムが結合した物が「シュウ酸カルシウム」(まんまだなぁ)です。

 食品や飲み物から体内に取り入れられたシュウ酸は、小腸・大腸などの腸管から吸収されて血管に入り、腎臓を経由して尿管の中に出ます。腎臓から尿管・膀胱・尿道までの経路(尿路)の中で、尿の中に溶け込んでいるシュウ酸や尿酸などと、カルシウムとが結合したものが、丁度そこにあったゴミ(細胞の欠片や細菌など)を核にして結晶すると、尿路結石になります。一般的な尿路結石は、シュウ酸とカルシウムが結合したシュウ酸カルシウムが主な成分として形成されています。尿路結石の内、腎臓で出来た物が腎結石、尿管で出来た物が尿管結石、膀胱で出来れば膀胱結石となります。

 そのため、尿路中にシュウ酸やカルシウムが多く存在する(濃度が高い)状態が長く続くと、それだけ尿路結石のリスクが高まることになるのです。
 これは、裏を返せば「尿路の中にシュウ酸、またはカルシウムが少ない(濃度が薄い)状態を長く保てば、それだけ尿路結石のリスクは低くなる」と言うことでもあります。

 腎臓は、体内の老廃物や有害な物質を体外に排出するため、尿を作っています。成人男性だと、1日に200リットル前後の尿が作られます。かといって、毎日200リットルも尿が出ている訳ではありませんね(1日の尿量は2リットル程度です)。血管から尿管に濾しとられたあと、ほとんどの水分は血管に再吸収されて、必要な水分が保たれる仕組みになっているのです。この「一度血管から尿管に出て、また血管に戻る」システムが巧く働かなくなっても、それだけ尿管に出たシュウ酸やカルシウムがその場に残り、結石のリスクを高めてしまうのです。


2.結石のリスクを低めるためには

 尿管中のシュウ酸やカルシウムの濃度を低く保つことで、結石のリスクは低くなりますから、

a.シュウ酸を体内に取り込まないようにする。
b.尿管内のシュウ酸やカルシウムの濃度を低く保つ。また、こまめに排出する。


の、いずれか(出来れば両方)を行いましょう。



a.シュウ酸を体内に取り込まないようにする。

 シュウ酸そのものの摂取を減らすか、腸に届く以前にシュウ酸を吸収しにくいかたちにしてしまう方法です。先述通り、シュウ酸は水に溶けやすい性質を持っていますが、カルシウムと結合したシュウ酸カルシウムには腸管から吸収されにくい性質があります。シュウ酸が腸で吸収される量が減れば、それだけ尿管中のシュウ酸濃度は低く保てるのです。

 シュウ酸はほうれん草・小松菜・モロヘイヤ・タケノコ・紅茶・コーヒー・チョコレート・ナッツ類などに多く含まれています。まずは、これらの食品を過剰に摂りすぎないようにしましょう。
 とはいえ、好んで飲食している物(特にコーヒー・紅茶。田中さんはお好きなようですから……)を急に替えることは辛いことですから、一寸だけ手を加えてください。
 ほうれん草などの場合、シュウ酸の水に溶けやすい性質を利用して、茹でたり、茹でた後水にさらすことで、含まれるシュウ酸は半減すると言われています。また、カルシウムを多く含む物と一緒に摂取することで、腸に届く前にシュウ酸カルシウムに変化させてしまうのも有効です。おひたしにはカツオ節や小魚をかければ、味も深くなって一石二鳥ですね。コーヒー・紅茶はミルクとしっかり混ぜて飲むとよいでしょう。(紅茶の場合、レモンティーにしても、レモン中のクエン酸がシュウ酸とカルシウムが結合するのを妨害するそうです)

 また、脂肪・動物性タンパク質・ビタミンCを過剰に摂取すると、腸に届くまでにシュウ酸とカルシウムが結合しにくくなり、その結果、多くのシュウ酸が血中・尿中に取り込まれてしまいます。具体的な理由は次の通りです。

◎脂肪:脂肪に含まれる脂肪酸がカルシウムと結合してしまうので、シュウ酸と結合して腸内への吸収を防ぐカルシウムが減ります。

◎動物性タンパク質:動物性タンパク質を摂ると、血中・尿中のクエン酸が減少します(腸内でないことに注意してください)。結果、シュウ酸とカルシウムが結合しやすくなります。

◎ビタミンC:ビタミンCは体内で様々な物質に変化しますが、その一つにシュウ酸があります。必要以上に摂ればそれだけ多くのシュウ酸が出来ることになります。勿論、ビタミンCは必要な栄養ですので、摂取することは大切です。



b.尿管内のシュウ酸やカルシウムの濃度を低く保つ。また、こまめに排出する。

 前段のような点を注意することで、不要なシュウ酸の摂取を防ぐことは出来ますが、健康的な食生活をしていても、ある程度のシュウ酸は入って来ます(カルシウムは言うに及ばず)。そのため、出来るだけシュウ酸とカルシウムを尿管の中に留めない工夫が必要です。

 まず、塩分の摂取量を抑えることが重要です。塩分を摂りすぎると、血管から尿管へカルシウムが再吸収されにくくなり、尿管内に留まりがちになります。しかも大量に尿を作ろうと働くため、大量の水分と共に、水分に比例しただけのカルシウムが尿管に送り込まれますから、尿管の中にカルシウムが充満することになります。

 水分を多め(1日当たりの尿量が2リットルになる位が目安だそうです)に摂って、尿の量と回数を増やすことで、尿管中のシュウ酸・カルシウムをこまめに排出し、濃度を低くすることも効果的です。
 水分と共にカフェインを摂るなら、シュウ酸の少ないウーロン茶がベターです(コーヒーや紅茶は先述の通りミルクと一緒に)。ただ、カフェインも過剰摂取すれば交感神経を昂ぶらせて、心身の休息を妨げますから、少しずつでも少なくしていただければ、と思います。水分は多めに取って頂きたいですから、カフェインも少ない麦茶やほうじ茶などのシュウ酸をほとんど含まない飲み物をおすすめします糖分の多い飲み物は、逆に血中のカルシウム濃度を高めてしまうのでおすすめ出来ません。(現状のように、出来るだけ早く、多く水分を入れる目的では効果がありますが、長期的・継続的に服用するにはポカリスエットはおすすめ出来ません事、追記しておきます)

 また、食事で取り入れられたシュウ酸やカルシウムの吸収は、食後2〜3時間がピークだと言われています。その時間帯に睡眠を取っていると、トイレに行けずに尿がその場にとどまる訳ですから、それだけシュウ酸やカルシウムが尿管中に溜まってしまうことになります。また、睡眠中は水分を体内に留めようという働きが強くなるため、作られる尿の量は減り、濃縮されますから、食後4時間以内の睡眠は避けた方がよいでしょう。



 以上、田中さんの結石がシュウ酸カルシウム由来の物と仮定したお節介なお話でした(尿管結石の8割はシュウ酸カルシウム由来と言われてます)。体質などにより、シュウ酸カルシウム以外の物質がメインの結石が出来ることもあります。発生の原理は同じですので、その原因物質を如何に体内に取り込まないようにするかの参考には出来ると思います。今は、結石以外の原因による血尿でないことを祈るばかりです……勿論、結石由来でも有難いものじゃぁありませんが(苦笑)>対処法が分かっているのと、余計な疾患を背負い込んでないだけ若干マシです(苦笑)


 日記絵、とても楽しみにしておりますが、我々のような無責任なギャラリーが増えることで、余分なプレッシャーを田中さんに与えているのではと危惧しております。勿論、絵を描くことが楽しくてストレスの解消になるからこそ、ここまで続けてきていらっしゃるのだとは思いますが、無理なく、楽しく描かれることを何より御優先下さい。
 最後に、ともすれば無用な、ともせずとも確実にお節介(しかもわかりにくい……)を押しつけてしまいましたこと、重ねてお詫びして失礼致します。
謹拝

2003/07/12 1750更新