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レールと車輪の関係

レールとその上を走る車輪との切っても切れない深い関係についてです。


●車輪の形状

 車輪の断面は右の図のようになっています。
 自動車のようなハンドル機構を持たない鉄道では,車輪の上下にとび出したふちの部分(フランジ)がレールの内側をなぞることで舵をとっています。しかしこれは別項の分岐器等の構造を複雑なものにする最大の要因でもあります。また,レール上に乗る部分は外側に向かってわずかに傾斜がつけられていますが,実はこれが列車がカーブをスムーズに曲がる上でとても重要な役割をもっています。

●ゲージ

 レールとレールの内側の幅のことを「ゲージ」と呼びます。国内でも数種類のゲージが採用されていますが,もっとも一般的なものはJR在来線の1,067mmで,国際的には幅の狭い「狭軌(ナローゲージ)」と呼ばれる部類に入ります。本来ならゲージは大きい方が安定性がよく高速性能も高いのですが,国土の狭い日本にはこれが正しい選択だったのでしょう。海外ではそれより広い1,435mmの「標準軌」と呼ばれるゲージがまさしくその名のとおり標準となっています。これは国内では新幹線等に少数派ですが採用されています。分類上はこれより狭いゲージはすべて狭軌と呼び,広いものはすべて「広軌」と呼ぶそうです。広軌は残念ながら国内には存在せず,広大な土地を持つオーストラリアやスペインに多いようです。

分類

ゲージ

主な採用路線(首都圏)

狭軌
762mm

地方の軽便鉄道(現在は国内に2路線しかないらしい)

1,067mm

JR在来線,小田急線,東急線,東武線,都営三田線等

1,372mm

京王線,都営新宿線,都電荒川線

標準軌
1,435mm

新幹線,京浜急行線,箱根登山鉄道線,京成線,都営浅草線等

広軌
1,600mm等

国内にはなし

  当然ゲージが異なる路線どうしでは相互乗り入れができず,また,払い下げ車両をそのまま譲り受けることもできないため鉄道会社にとって社運に関わる非常に 重要な選択でもあります。例として都営地下鉄線では,相互乗り入れの都合により同一経営でありながら3線すべてのゲージが異なるというおもしろい事実があ ります。
 また,乗り入れのためにゲージ変更というたいへん大がかりな工事を実施した鉄道もあり,もっとも知られているのがJR奥羽本線の福島・山形間,JR田沢 湖線の盛岡・大曲間でしょう。ともに在来線(狭軌)に新幹線(標準軌)を直通させるため拡幅工事です。これによりこの区間を走る在来線はすべて台車を標準 軌に交換されており,発着駅以遠へ乗り越すには標準軌の車両への乗り換えが必須となってしまいました。ただし,秋田新幹線のうち大曲・秋田間については標 準軌と狭軌が二本並んで設置されているという極めて変則的な複線構造にすることで在来の奥羽本線を狭軌のまま乗り入れさせています。
 古い例では京王線(府中以西),京成線がやはりゲージ変更をしており,さらに千葉の新京成線にいたってはこれを2度に渡って実施した経緯があるそうです。
 国境が陸続きであるヨーロッパではゲージの異なる区間を直通させるために,台車を入れ換える設備を設けたり,特殊なゲージ可変台車を専用の設備を通過させることでゲージ変更を行う等の方法が用いられていますが,現在,
JR総研でもゲージ可変機能をもつフリーゲージトレインの開発がすすめられており,実用化すれば狭軌・標準軌間の直通が可能になります。これはヨーロッパのものより一歩進んだ方式で,乗客を乗せたまま停車することなくゲージ変更ができるという画期的なものだそうです。


カーブを曲がる困難

 列車の車軸は左右の車輪を貫いて結んだ構造になっています(左右の車軸が独立したものも一部にあるそうですが)。これは構造的にはシンプルですが,実はカーブを曲がる際に「カーブの内側と外側で発生する回転差を吸収できない」という大きな問題点を抱えています。
 たとえば自動車では,左右の車軸の中間にディファレンシャルギアという実によく考えられた回転差吸収機構が設けられているので,ハンドルを切っても車体 はスムーズに転回することができます。しかし,多くの車軸をもつ列車ではこの複雑な装置を各車軸に設けることはあまりうまい方法ではありません。
 しかし,列車の車輪はこの問題を実に単純な方法で解決しているのです。

カーブと車輪

 左図上段は列車が直線を走行しているときの車輪とレールの断面です。この場合,左右の車輪はそれぞれがさきに述べた傾斜部分のほぼ中央でレールと接するようになっています。


 では,カーブではどうでしょう。下段は右カーブを曲がっているときの断面図です。実は2本のレールの間隔(ゲージ)は常に一定というわけではなく,カーブではわずかに広くなっています(この広げ代をスラックという)。このため,車輪は遠心力により外側にずれ(図の左方向),外側車輪のフランジがレールに押しつけられた状態になります。

 このときに左右の車輪がレールに接している部分に注目してみましょう。外側車輪(図の左側)は傾斜部分の内側,つまり径の大きい部分で接しています。対して内側車輪(図の右側)は傾斜部分の外側,径の小さい部分で接しています。
 ここで双方の車輪が共に1回転すると,大きい径の方は多く進み,小さい径の方は少ししか進まないことは明らかです。これが列車の実にシンプルで理にかなった回転差吸収機構なのです。


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