「逃避し続けて2000年」

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  「時は金なり」という言葉がある。時間はお金のように大切なものである、という意味で大意はあっているであろう。
 これは、私のような会社員という身分では、別な意味でも実感させられることがある。残業ということで仕事が長引いた場合は、その働いた分の時間が残業代金ということで規定の金額に追加されて、給料として払われる。まさに、時間を売って金を得ているのである。

 そんな私の生活も冬休みに突入した。暫くは、会社に時間を売りに行ったり買ってやるから出て来いなどと言われたりすることもない。自分の都合だけで自由に時間を浪費出来る期間である。
 幸いにも私の仕事は世間を騒がせている、件の2000年問題を解決したり客先に謝ったり、といったことをする必要も無い。年末から正月が明けるまで連続した休みは無事に確保出来ている。ありがたいことである。というより、プログラム関係の仕事を選ばなかった自分の慧眼を見直しているところである。えっへん。

 ということで、自分だけの時間の筈なのだが、なぜかいまだに忙しい。もちろん、仕事に行ったりする必要はないので、忙しいのはプライベートな遊びに関してのことだけである。
 元々、時間が出来たらやろうと思っていることは多い。「ホームページの更新」というやつもそうであるし、まだ終わってないまま積んであるゲームをプレイするのだって、パソコンのデータの整理やらバックアップを取るのだって、マジックというトレーディングカードゲームで遊ぶ為の下準備をするのだって、読んでない小説を読むのだって、溜まったビデオを見るのだって、全てそうである。遊びだっていろいろやろうとすると、それなりに時間がかかるのだ。
 こういった遊びの範疇に入るもの以外にも、部屋の片付けやら親に手伝わされることやらで、やるべきことはいくつもある。時間はいくらあっても足りることはない。

 それを効率よく解消すべく、私はそのいくつもある「やろうと思っていること」を緊急性と重要性によって分類し、頭の中で行動優先順をリストにしている。空いた時間が出来次第、片付けてしまおうと出番を待っているのである。
 この優先順位というのも、時間によって変化する。暫く更新していなければ、やはり早めに更新作業はしないといけない。明日カードゲームで遊ぶ集まりがある、となればその準備はしないといけない。借り物の本やゲームは次に会う頃には返せるように読んだり終わらせたりしておきたい。バックアップも取らないでおくとそのうちデータが飛んでしまうし、データの整理をしないと散らかったファイルが空き容量を圧迫していったりする。

 そのため、普段から少しまとまった時間が出来れば、そのそれぞれの締め切りに追われながら何かを進めるようにしている。
 これ自体は全く問題はない。手をかければ少しずつは片付いていくものだ。問題は、そのせっぱ詰まった状況になると何故か発生している逃避行動である。

 逃避行動。それは人間の精神状態を、過度の緊張状態から緩和するべく起こる無意識化での行動である。つまり、やらなくてはいけないことをやらずに、他のことをやってしまうのである。
 私の場合、大抵は自分のやることリストの2番目以降に位置しているものに逃避することになる。一番せっぱ詰まっている物事の解決を先送りにして、もう少し気楽に片付けられる二番目以降の作業を開始することが多い。
 もちろんこれは、気分転換によって新たな作業の効率を上げたり、ぎりぎりの時間まで自分を追い込んだりすることによって自身の集中力を上昇させたり、という解析が出来なくはない。でも、やっぱり逃避は逃避なんだけど。

 ということで、現在の私の状況はどんなものになっているかと言うと、大掃除の片付けをしていたところ、部屋の中央より少し脇から壁に向かって積み重なっていた、雑誌やら本やらPCのパーツの箱やら光磁気メディアやらその箱やらトレーディングカードの入った箱やらが、崩れてきたところであったりする。
 さらにその前には、押し入れの前に置いてあった別の本やら服やらの山を、片付けるために部屋の中央部に移動したばかりである。床には足の踏み場はなく、まさに夢の島のゴミ廃棄場のような光景が眼下に広がっている。

 しばらく更新されていなかった雑文サイトに、新作を書いてアップデートしたくなっても不思議ではない状況だ。問題は、私がどこにどうやって寝ればいいのか、ということだけで。

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