Shanghai 1994


 東洋の魔都とも呼ばれる、上海は改革開放路線以降の中国を象徴する大都会へと変貌した。2003年現在、上海はその観光拠点としての集客力と注目度において、もはや香港に比肩するかそれを凌駕する勢いである。僕は1994年、まだ日本人ビジネスマンが多く訪れる前の上海に降り立った、........................。

 当時の国際空港は市街地からやや離れた場所に位置する虹橋空港である。空港ロビーから一歩足を踏み出した瞬間、上海の人々から放たれる形容しがたいオーラを僕は忘れられないでいる。誰もが他人を出し抜くことを、群集から頭ひとつ抜け出すことを求めている。そのためのチャンスを求めている。むき出しの刃のような危険なオーラが漂う街、それが僕が上海に対して抱いた最初の感情だった。
 外灘地区はそれでも巨大な長江の支流に沿って西洋建築が並ぶ地域である。有名な「和平飯店」では今も列強の中国支配時を想起させるようなジャズバンドの演奏を聴くことができる。21世紀となりこの地域も様相を大きく変えていると聞く。あのノスタルジックな上海はもうないのかも知れない。
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