Designer: Mark Herman & Richard Berg
このシリーズを知ったのは、GMTが出している東部戦線シリーズを買った時でした。このシリーズは、当時中央軍集団と南方軍集団が出ており、先行して出ているタイフーンは少々システムが洗練されていないという話でした(この時点では北方軍集団は出ていませんでした)。わたしはこれら3つを全部所有していたのですが、タイフーンを他の2つと擦り合わせるルールがGMTの出しているC3iという雑誌に掲載されているという情報を(某巨大匿名掲示板で)得ました。
その後、偶然にもこのC3iのその号を神保町の書泉ブックマートで発見して購入しました。ルールは入手できましたが、付録として付いていたゲームカウンターのバリエーションやエラッタの中に、このGBoHシリーズのものがありました。しかも、C3iの記事はSPQRのシナリオが多数あり、見ているうちに興味を掻き立てられて、どうしても欲しくなりました。
結局、Caesar: The Civil Warsをブックマートで購入して「あー、やっぱりこういう時代もいいかも」と思ってしまい、手当たり次第に古代ローマ共和国/帝国関連の書籍を買いあさりどっぷりはまりました。日本人であっても古代ローマ史は一般教養として勉強しても損はないと思います。いろいろなゲームや映画が古代ローマを参考にしているのがよくわかります。
下のリストのゲームはすべて所有しています。
| 1 | Great Battles of Alexander | アレクサンドロス大王の東方遠征の各戦いを再現します。初版と第二版が存在しています。 収録されているシナリオは以下の10個です。 CHAERONEA, 338 B.C. THE LYGINUS, 336 B.C. PELIUM, 336 B.C. THE GRANICUS, 334 B.C. ISSUS, 333 B.C. GAUGAMELA, 331 B.C. THE JAXARTES, 329 B.C. SAMARKAND, 328 B.C. ARIGAEUM, 327 B.C. HYDASPES, 326 B.C. |
| 2 | SPQR | 共和制ローマの拡張期の戦いを第二次ポエニ戦争を中心として再現します。一番古いものでピュロス王のイタリア遠征(この当時はローマはまだ半島を統一していませんでした。在半島ギリシャ植民都市の要請でピュロスの遠征が実現しました)から一番新しいものでポエニ戦争後のローマのマケドニア征伐まで、史実シナリオ5つと仮想シナリオ1つが含まれています。 長らく絶版でしたが2008年現在で第3版が販売されています。Deluxシナリオ集込みのDelux SPQRまたはSPQRのみの2種類があります。 ゲームにはI,III,V,VII,X,XIV,XV,XIX軍団が登場しますが、この時代のローマ軍は毎年編成を変更していたので(ローマは農業国の市民軍なので連続徴兵しては国力が落ちます)、軍団番号に歴史的な意味はほとんどありません。 敵対勢力としてはギリシャ、カルタゴ、ヌミディア、ケルト(ガリア)、スペイン(イベリア)の各部隊が登場します。 シナリオは BENEVENTUM, 275 B.C. ギリシャ対ローマ。イタリアに侵攻したギリシャのピュロス王とそれを迎え撃つ執政官デンタトゥスの戦いです。この戦いでローマ軍は象部隊に敗北します。Pyrrhus vs Consoul Dentatus THE BAGRADAS PLAINS, 255 B.C. カルタゴ対ローマ。第一次ポエニ戦争でカルタゴ軍を破り北アフリカに侵攻したローマ軍とカルタゴ軍の戦いです。Xanthippus vs Consoul Regulus CANNAE, 216 B.C. カルタゴ対ローマ。第二次ポエニ戦争序盤でアルプスを越えてイタリアに侵攻したハンニバルとそれを迎え撃つ執政官ヴァッロの戦いです。大軍を擁するローマ軍はハンニバルにより包囲殲滅されました。Hannibal Barca vs. Consoul Terentius Varro ZAMA, 202 B.C. カルタゴ対ローマ。第二次ポエニ戦争終盤でスペインから北アフリカに侵攻したスキピオとそれを迎え撃つためにイタリアから脱出して来たハンニバルの決戦です。Hannibal Barca vs. Scipio Africanus CYNOSCEPHALAE, 197 B.C. 第二次ポエニ戦争でハンニバルを支持したマケドニア王フィリッポスV世への報復戦争です。Philip V of Macedon vs. Consul Flaminus ALEXANDER IN ITALY, 319 B.C. アレクサンドロスが東方ではなく西方に遠征したIFシナリオです。 の6本です。 |
| 4 | Caesar: The Civil Wars | 古代ローマの共和制の最後に行われたカエサルとポンペイウスの内戦の各戦いを再現します。 CaesarにIII,V,VI,VII,VIII,IX,X,XI,XIII,XIV,XV,XXVII,Alaudea,XII、 PonpeyにI,III,Galician,XVI,XVII,XXX,X,SyrianA&B,MacedonianA&B、 Ven Vidi ViciでXXXVI,Pont,Deiot軍団が登場します。この時代のローマ軍は市民軍ではなく、将軍が私費で編成した職業軍人です。したがって軍団編制は維持されており番号は歴史的な意味を持ちます。ポンペイウスは強大な勢力をもっており、東方(オリエント)を基盤としていました。東方に逃げたポンペイウスを追ってカエサルは転戦します。 シナリオは DYRHACHIUM ILLYRLA;48BC LESNIKIA ILLYRLA;48BC PHARSALUS THESSALY;48BC RUSPINA 46BC THAPSUS AFRICA;46BC MUNDA SPAIN;45BC の6本です。 |
| 6 | Caesar: Conquest of Gaul | ユリウス・カエサルが行ったガリア征服の一連の戦いを再現します。 VII,VIII,X,XI,XII,XIII,XIV軍団が登場します。職業軍人の固定軍団ですから軍団番号は重要です。ガリア人は各部族ごとに王に率いられて登場します。 シナリオは BIBRACTE, 58 B.C. THE RHINE, 58 B.C. THE SABIS, 57 B.C. BAY OF BISCAY, 56 B.C. この戦いはガレー船による海戦です。このシナリオが発展して WAR GALLEYになりました。 BRITANNIA, 55 B.C. LUTETIA, 52 B.C. の6本です。 |
| 7 | War Galley | 古代地中海で行われたガレー船同士の戦いを再現します。 シリーズは同じですがルールなどは他と全く異なります。 |
| 8 | Cataphract | ビザンツ帝国(東ローマ帝国)が行ったローマ回復戦の各戦いを再現します。主役は名将ベルサリウスです。 DARA, 528 A.D. CALLINICUM, 531 A.D. TRICAMERON, 534 A.D. SENA GALLICA, 551 A.D. TAGINAE, 552 A.D. CASILINUM, 554 A.D. |
| Simple GBoH | GBoHのルールを単純化してプレイしやすくした簡略ルールです。 | |
| 9 | Caesar in Alexandria | ユリウス・カエサルのアレクサンドリア防衛戦を再現します。 海戦と陸戦を１本でまとめます。VI, XXVII, XXXVII軍団が登場します。 JULIUS CAESAR vs GANYMEDES EGYPT, 47 B.C. |
| 10 | Devil's Horsemen | モンゴル帝国の西方進出を再現します。 The Indus, 1221 (ペルシャ). The Kalka 1223 (ロシア) Liegnitz, 1241 (東部ヨーロッパ) Ayn Jalut, 1260 (マムルーク) |
| 11 | Siege of Alesia | カエサルのガリア遠征中に発生した最大にして最後の大規模戦闘です。 要塞都市アレシアに篭るウェルキンゲトリクスの主力部隊と、それを包囲するカエサルのローマ軍。さらにその外を包囲するガリアの増援部隊という燃えるシチュエーションです。 |
| タイトル | 概要 |
| PHALANX | Great Battles of Alexanderの追加モジュール#2 SELLASIA, 221 B.C. マケドニア対スパルタの戦い。 MANTINEA, 208 B.C. |
| Tyrant, 2003 | Great Battles of Alexanderの追加モジュール#3 シラキュースの戦いです。 |
| War Elephant | SPQRの追加モジュール#1 ローマ軍は出て来ません。マップ1枚とカウンター400個が追加されます。 セレウコス朝シリアとプトレマイオス朝エジプトの戦いです。両王朝の軍のユニットが追加されます。 RAPHIA, 217 B.C. Antiochus the Great vs. Ptolemy @ Syria MAGNESIA, 190 B.C. Antiochus the Great vs. Lucius Scipio @ Greece |
| Pyrrhic Victory | SPQRの追加モジュール#3です。マップ2枚でカウンターは付属しません。ギリシャのピュロス王のイタリア遠征の2シナリオが追加されます。 HERACLEA, 280 B.C. Pyrrhus vs. Consoul Laevinus @ Italy AUSCULUM, 279 B.C. Pyrrhus vs. Consouls Sulpicus and Decius @ Italy |
| Africanus | SPQRの追加モジュール#4です。マップ1枚とカウンター120個が追加されます。ローマ同盟軍とカルタゴ軍のユニットが追加されます。 BAECULA, 208 B.C. Scipio vs. Hasdrubal Barca @ Spain ILIPA, 206 B.C. Scipio vs. Hasdrubal Gisgo and Mago Barca @ Spain |
| Jugurtha | SPQRとCaesar: TCWの追加モジュール扱いですがSPQRがあればプレイ可です。 マリウスが活躍したユグルタ戦争(対ヌミディア戦)の戦いを２つ。マップ1枚。カウンター140個。 THE MUTHUL RIVER, 109 B.C. CIRTA, 106 B.C. |
| Dictator | Caesar: TCWの追加モジュール#1。北イタリアへのゲルマン人の侵入撃退戦のシナリオとギリシャのケイロニアでの戦いシナリオの2つ。マップ1枚。カウンター240個。 VERCELLAE, 101 B.C. Marius指揮のローマ軍対Beorix王指揮下のCimbri族 CHAERONEA, 86 B.C. Sulla指揮のローマ軍対Archelaeus将軍指揮下のPontine軍 |
| Caratacus | Caesar: CoGの追加モジュール#1。ブリテンでの戦い2つ。マップ1枚。カウンター100個。 MEDWAY, AD 43 WALES, AD 51 |
| Gergovia, 2007 | Caesar: CoGの追加モジュール#2。紀元前52年ガリアでの戦い1つ。マップ1枚。カウンター無し。 Gergovia, 52 B.C. |
| Veni, Vidi, Vici | Caesar: TCWの追加モジュール#2。Dictatorが必須。当方での戦い2つ。カウンター60個。 NICOPOLIS, 48 B.C. ZELA, 47 B.C. |
| ATTILA | Cataphractの追加モジュール#1。マップ1枚。カウンター140個。フン族とビザンツ帝国の戦い。 The Utus, 447 C.E The Catalaunian Fields, 451 C.E. |
| Salamis | War Galleyの追加モジュール#1 |
| Mamluk, 2005 | Devil's Horsemenの追加モジュール#1 The Battle of Mansourah, 1250 (Egypt) The Battle of Homs, 1281 (Syria) |
| BARBARIAN, 2008 |
SPQR第3版の追加モジュール。マップ1枚。カウンター140個。サムニウム(サムニテス)対ローマ、ガリア対ローマのシナリオを計5個収録。 サムニウム軍団兵、サムニウムコホルト、カンパーニュ騎兵、ケルト中装歩兵、ガリア軽歩兵、ガリアバーバリアン歩兵、ケルト槍騎兵、ケルト戦車が登場 Lautulae, 315 BC Tifernum, 297 BC Sentinum, 295 BC Telamon, 225 BC Cremona, 200 BC |
注: マリウスはローマ共和国の軍制改革を行い、市民軍から職業軍人の軍隊にした人物。カエサルはこの人物の親族(甥)だったはず。
このリストのほかに、SamuraiとLion of Northというタイトルがあります。Samuraiは戦国時代の合戦を、外人独特の錯覚でゲーム化したもので、Lion
of Northは神聖ローマ帝国時代の陸上戦のようです。テルシオ、カラコール戦術などの用語を知っている人なら楽しめるでしょう。
一応、メーカーに発注はしておりますが、受注が250溜まったら再版(Project 250)してくれるそうです。
GMTはC3iという冊子を出していまして(不定期でおおむね年1冊)、この中で、既存のユニットとマップを使い、新しくリーダーを定義したGBoHシリーズの追加シナリオを発表しています。この冊子にはA5サイズのカウンターシート(140個)が付いていて、新しく定義されたリーダーやシナリオで追加されたユニットが入手できます(その号に付いておらず、前号についていたり翌号に持ち越されたりもしますが)。
三頭政治はカエサル、クラッスス、ポンペイウスの3人による共同政治です(3人とも元老院議員です)。クラッススが手柄をあせって東方のパルティア相手の戦いで戦死したあと、カエサルはガリア征服に乗り出します(Conquest of Gaul)。その間に元老院＆ポンペイウスとカエサルの折り合いが悪くなり、ガリア征服後にカエサルはルビコン側を渡り内乱が始まります(The Civil War)。内乱の勝者となったカエサルは独裁的傾向を強めますが、王の存在を極度に嫌う有志(元老院共和主義派)によって暗殺されてしまいます。この後、共和主義者対アントニウス(カエサルの一の子分)＆オクタビアヌス(カエサルの養子)の戦いが行われ、共和主義派は壊滅します。さらにこの後、カエサルの跡目相続でアントニウスとオクタビアヌスが争い、オクタビアヌスが勝利します。オクタビアヌスは初代ローマ皇帝アウグストゥスです。