●--- 第7章:天駆ける鬼神 ---


『AW-1より各機・・・戦闘空域への侵入を確認。この戦いの終結は、あなたがたにかかっています・・・GOOD LUCK(幸運を)!』

敵司令部・プラエス基地上空に侵入する、手負いのMINX-17。渓谷突破の際、3機を失っている。
司令部へは、高々度爆撃機が侵攻中。迎撃機を上げさせず、基地上空の制空権を確保するのが、MINX-17の"最後の"任務である。

「001より各機!・・・いいかお前ら!俺たちゃ、お姫様を背中に背負ってんだ。男だったら守り抜いてみせろっ!」 

隊長の檄が飛ぶ。各機散開。


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プラエス基地・最終防衛隊。
AI戦闘機の挙動は、今までとはまったく違っていた。パターンを崩し、的確にバックを取ってくる。一瞬の油断が命取りだ。

「101から102、6オクロック、ボギー!かぶられてるぞ!」
「!いつの間に!?」

102、ジンキング。203が直交、ガンアタック。ボギー爆散。
203は102のジェットウォッシュを食い、右エンジン出力低下。・・・立て直した瞬間、スキができた。
真下から・・・ペルソナ。短く射撃。

「203、左カナード被弾!・・・くそっ、高度が上がらな・」

203の無線が、途切れる。

「201より203!応答しろ!203!・・・タダキチっ!!」
「201さくら!双葉!返事しなさいよっ!双葉ぁぁっ!!」

 

・・・ペルソナは、まさに鬼神のような動きを見せていた。
301と102の2機を相手にしながら、彼らをあざ笑うかのように飛び抜ける。
機首振り、薙ぎ払うようにガンアタック。301被弾。・・・まったく、歯が立たない。

「201より102!援護するっ!」

ペルソナの6時方向、200m。絶好のポジション。

「・・・もらった!」

RDY GUN。射撃。・・・ペルソナが一瞬、視界から消える。

「・・・ちっ!」

反射的に上を見上げる。身体に叩き込まれた空戦の基本。・・・ペルソナは、いない。

「!うにゅう!下っ!!」

普通の航空機であれば、上昇と下降では明らかに上昇する方が有利だ。
・・・しかし、相手は4DCV機。常識は、通用しない。
スラスターで無理やり機体を押し下げ、201の下方をパスするペルソナ。あっという間にバックを取る。
201、左マックスターンでブレイク。速度が落ちる。アフターバーナー、半ばむりやりに加速し、運動エネルギーを取り戻そうとするが・・・間に合わない。


・・・次の瞬間。ペルソナと201の間に、001が割り込んでいた。
ペルソナの射撃を受け、001の右エンジンが消し飛ぶ。発火・・・自動消火。黒煙を噴きながら、墜ちていく。


「201さくらから001!・・・ねこ!ねこっ!応答するのよっ!!」

悲鳴にも似た、さくらの叫び。

「・・・001から201・・・ったく、最後まで世話ァ、焼かせやがって・・・」
「隊長っ!!」

「・・・おネーちゃん・・・」

「ねこ!隊長!脱出してっ!!」

「・・・ついてねぇなぁ・・・射出座席がイカれるなんざ、聞いたことねぇや」
「おネーちゃん・・・どうやら、さよならなのですよ・・・」
「・・・ねこちゃん、安心しな、お前独りで行かせやしないよ」
「・・・ショーちゃん・・・」

001が水面に吸い込まれていく。・・・水柱。
通信が、途絶えた。


「・・・隊長ぉぉぉっ!!」
「・・・ねこぉぉぉ!!」

二人の叫びが重なる。


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・・・・・・そして、その時。

 


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