●--- 第8章:シンクロナイズ ---


・・・その時、将臣はすべてを「知った」。

広い空の中、仲間たちの位置や姿勢、敵の行動。そのすべてが、手にとるように分かる。
001は緩い角度で着水。沈没の心配はなさそうだが・・・二人とも、生きていてくれ。
203、タダキチと双葉は・・・無事だ。なんとか脱出できたようだな。
後方7時半、1マイル離れて202と403。ディフェンシブ・スプリット、ペルソナを孤立させようと奮闘している。
302が被弾、バグアウト。戦線を離脱。ゆうかと奈留は無事だろうか。
地上にはAAAとSAM。しかしその半分はダミーだ。気にすることはない。
目を凝らせば、50マイル先に爆撃機隊。戦闘に巻き込む心配はなさそうだ。
眼下には、急加速で運動エネルギーを蓄えようとしているペルソナ。

そして、将臣の背中には・・・肩に手をかけるようにして、さくらがいる。


それは、EXAMの真の力だった。
将臣にはさくらの、さくらには将臣のすべてがわかる。・・・お互いの思いも、そして苦しみさえも。

もう、操縦桿もスロットルもいらない。・・・自らの翼で飛べるから。


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突如、予測不可能な空戦機動を開始したMINX201。AW-1の管制室に、動揺が走る。

「201の空戦機動が予測できません!・・・ど、どうなってるの!?」
「記録は回してるな?あとでフライトレコーダーと照合できればいい!201の挙動を見逃すな!」

この世界には、物理法則というものがある。戦闘機であっても、物理法則から逃れることはできない。
逃れられないその法則の中、ドッグファイトにはセオリーが生まれ、すべての戦術は、破られることのないそのセオリーの上に成り立っていた。
しかし、今やその全機能を文字通り「手足のように」操るMINX201は、常識では考えられないような戦いを見せていた。

パワーダイブから突然、機首を左に振りガンアタック。ボギーが翼をもぎ取られ宙に舞う。
無理な挙動によってバランスを崩し、スピンアウト。しかし、カナードとスラスターを駆使し、一瞬でその挙動を押さえ込む。
スピンが止まった時、そのガンサイトは次の標的を捕らえている。また一機。

ペルソナがデッドアヘッド、HAM-99、フォックス・トゥー。
201はスラスター全開で急加速、ミサイルに向かって突進する。
誰もが直撃を確信した瞬間、まるで見切ったかのようにロールする201。ミサイルは追尾しきれず、二枚の垂直尾翼の間をすり抜ける。
近接信管はその相対速度に対応しきれず、遥か後方で爆発。
201はすれ違いざまにその場縦ロール、140°でガンアタック。ペルソナは6G引き起こしのままサイドスライド、横滑りでかわす。

それはすでに、戦闘機の戦いというより文字通りの「ドッグファイト」だった。
生き物のように自在に空を駆ける、二匹の戦闘機。

 


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