●--- エピローグ:ハロー・アゲイン ---


海面を滑るように、飛行する201。
インカムからは、勝利を祝う司令部の歓声。

・・・しかし、201のコクピットは無言。言葉もないまま、時間だけが過ぎていく。

「・・・おわったね・・・」

沈黙を破り、さくらが口を開く。

「・・・・・・ああ」

「みんな・・・逝っちゃったね」

涙交じりの声。
後ろに手を伸ばし、さくらの頭をくしゃくしゃとなでてやる。


「・・・ね、うにゅう」
「ん?」
「これから・・・どうするの?」

「そうだな・・・平和な生活も悪くないかもな」

「・・・え?」

「軍を離れるのも悪くない」

「・・・そっか・・・じゃ、あたしたちもお別れだね・・・」
「・・・・・・」
「だって、あたしは戦闘機のAIだもん・・・・・・ついてけないもん・・・・・・」


頭上を一機のMINX・・・402がパスしていく。翼を左右に振る。


「・・・あ、でも心配しないで!・・・あたしは・・・へいきだから・・・」

あたしは平気だから、と言いたかったのか、兵器だから、と割り切ろうとしたのか。


また、しばしの沈黙。


「うにゅう・・・」
「何だ?」

「あたしね・・・・・・いや、なんでもないよ」

はじめて見るさくらの・・・桜が時折見せた、せつなそうな表情。


「・・・そんな、せつなそうな顔するなよ。
 退役するったって、勲章がわりにお前をいただいていけるんなら、の話だしな」

「! そ、それって・・・」

「お前がよかったら、だけどな」


「う、うにゅぅ・・・・
 ・・・あ、あれ?なんだこりゃ?なんか・・・嬉しいのに・・・涙、止まんないよ・・・
 涙腺が故障したかな・・・えへへ」

 

...PiPiPi,PiPiPi...
チャンネル2にコール。回線を繋ぐ。

「001ねここより201〜、ひゅーひゅー☆ひゅーひゅー☆な〜のですよ〜〜」
「ね、ねこ!?無事だったの!?」
「あいっ☆ ショーちゃんも無事なのですよ〜」
「どこにいるんだ?」
「おネーちゃんの真下、なのですよ〜〜」
「・・・あ!見てほら、あそこ・・・2時方向、距離400!」


朝焼けにきらめく波頭の合間、001の機体が浮かんでいる。
そしてその上に、人影が2つ。大きく手を振っている。

瞬く間に飛び越える。減速、軽く右旋回。


また、チャンネル2にコール。マルチチャンネルモードに切り替える。

「203双葉です・・・お二人とも、お幸せに」
「202まゆらから201、あの・・・おめでとうございます〜」
「403安子。・・・式には呼んでくれるんだろうな?」
「302奈留から201、・・・いいな〜」

仲間達の冷やかし声が届く。・・・みんな、無事だったんだな。


「・・・あ〜〜っ!みんなしてもーーーっ・・・」

真っ赤になった、さくら。


「冷やかしの集中砲火でおネーちゃんを撃墜っ!な〜のですよ〜〜」

「うっ、うるさいよ!!」

 

さくらの・・・桜の口癖が、口をついて出た。

 

- Fin -

 

 


↑Back to TOP
←Previous Chapter |◎Appendix |PostScript→