海面を滑るように、飛行する201。
インカムからは、勝利を祝う司令部の歓声。
・・・しかし、201のコクピットは無言。言葉もないまま、時間だけが過ぎていく。
「・・・おわったね・・・」
沈黙を破り、さくらが口を開く。
「・・・・・・ああ」
「みんな・・・逝っちゃったね」
涙交じりの声。
後ろに手を伸ばし、さくらの頭をくしゃくしゃとなでてやる。
「・・・ね、うにゅう」
「ん?」
「これから・・・どうするの?」
「そうだな・・・平和な生活も悪くないかもな」
「・・・え?」
「軍を離れるのも悪くない」
「・・・そっか・・・じゃ、あたしたちもお別れだね・・・」
「・・・・・・」
「だって、あたしは戦闘機のAIだもん・・・・・・ついてけないもん・・・・・・」
頭上を一機のMINX・・・402がパスしていく。翼を左右に振る。
「・・・あ、でも心配しないで!・・・あたしは・・・へいきだから・・・」
あたしは平気だから、と言いたかったのか、兵器だから、と割り切ろうとしたのか。
また、しばしの沈黙。
「うにゅう・・・」
「何だ?」
「あたしね・・・・・・いや、なんでもないよ」
はじめて見るさくらの・・・桜が時折見せた、せつなそうな表情。
「・・・そんな、せつなそうな顔するなよ。
退役するったって、勲章がわりにお前をいただいていけるんなら、の話だしな」
「! そ、それって・・・」
「お前がよかったら、だけどな」
「う、うにゅぅ・・・・
・・・あ、あれ?なんだこりゃ?なんか・・・嬉しいのに・・・涙、止まんないよ・・・
涙腺が故障したかな・・・えへへ」
...PiPiPi,PiPiPi...
チャンネル2にコール。回線を繋ぐ。
「001ねここより201〜、ひゅーひゅー☆ひゅーひゅー☆な〜のですよ〜〜」
「ね、ねこ!?無事だったの!?」
「あいっ☆ ショーちゃんも無事なのですよ〜」
「どこにいるんだ?」
「おネーちゃんの真下、なのですよ〜〜」
「・・・あ!見てほら、あそこ・・・2時方向、距離400!」
朝焼けにきらめく波頭の合間、001の機体が浮かんでいる。
そしてその上に、人影が2つ。大きく手を振っている。
瞬く間に飛び越える。減速、軽く右旋回。
また、チャンネル2にコール。マルチチャンネルモードに切り替える。
「203双葉です・・・お二人とも、お幸せに」
「202まゆらから201、あの・・・おめでとうございます〜」
「403安子。・・・式には呼んでくれるんだろうな?」
「302奈留から201、・・・いいな〜」
仲間達の冷やかし声が届く。・・・みんな、無事だったんだな。
「・・・あ〜〜っ!みんなしてもーーーっ・・・」
真っ赤になった、さくら。
「冷やかしの集中砲火でおネーちゃんを撃墜っ!な〜のですよ〜〜」
「うっ、うるさいよ!!」
さくらの・・・桜の口癖が、口をついて出た。
- Fin -