2018.12.22
楽曲エッセイ:Glorybound/Poco 娘達が男達を高揚させる

 1981年にリリースされたPocoの15thアルバム、"Blue And Grey" の中のオープニング曲である。
米国ではBlue And Greyとは南北戦争を表し、軍服の色が青:北軍、灰:南軍から来ている。
ひとつ前の楽曲エッセイも南北戦争がテーマであったが、この曲も忘れられない。創設メンバーのラスティ・ヤングの曲であるが、彼らしいとぼけた中に強烈な皮肉を込めた一曲である。この頃のPocoはラスティとリードギタリストのポール・コットンしか残っておらず、二人は4thアルバム以来、Pocoを献身的に支えてきた名コンビである。ラスティはコロラド出身だがポールは南部はアラバマ出身ということもあってこのアルバムのコンセプトはポールが温めていたのではないだろうか。
 難しいテーマと思うが前エッセイで取り上げたスティブン・スティルス作の
Daylight Againの厳かな鎮魂とは雰囲気が大分違う。
”(見送る)娘達が男達を高揚させる” なるフレーズは、市民が義勇兵としての勤めを果たしたら無事に帰還が約束されているような状況を伺わせる。開戦前、市民兵は当局からそのように聞かされていたのかもしれないが次第に戦況は怪しくなり、歌詞の後半は彼岸に向って三途の川を渡ろうとする悪夢を見ているようである。
 続いて出て来るYanks=ヤンキーとは南部人が北部人を指す俗称であることから、ラスティとポールは南部側の視点に立っていることが判る。”風と共に去りぬ” のように南北戦争が背景となる映画を思い浮かべると南部を舞台にした例が多いような気がするのだが、音楽にしても南部はブルース、ゴスペル、カントリー、ケイジャンなど多様な文化が濃いようにシナリオも膨らむのかもしれない。
 Gloryboundとは栄光、勝利へ向うという意味の他に天国へ向うという意味も重なる不思議な文言に思える。

Glorybound

君達も、兄弟が居る人もそうでない人も、皆で行こう
全員集合 招集の時が来た
軍旗が街の公会堂に沢山見えるだろう
娘達が男達を高揚させる

背嚢を背負え 銃を取れ
それほど長く掛るまい それほど手こずることもあるまい
我らが意志をヤンキー達に見せてやれ
やつらが判らないようなら追い払うまでだ

街の中を汽車が進む 乗り遅れるな
栄光に向ってまっしぐら

皆、剣が峰を過ぎた処で会おう
首尾よくそこを越えれば今度は橋の向こう岸だ
パラソルをさして彼女達が迎えてくれる
皆、愛しい彼に声援を送り こっちへ来てと手招きしている

街の中を汽車が進む 乗り遅れるな
栄光に向ってまっしぐら
そう、君も汽車に乗った方がいい

written by Rusty Young
from "Blue And Grey"

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