2021.11.7
楽曲エッセイ:
Roll On/Alabama/イリノイ州の雪だまりで起きた事件とは?

 今回は80年代に大きな成功を収めたカントリー・バンド、アラバマの1984年リリースの通算8枚目のアルバム、"Roll On" からタイトル曲を取り上げようと思う。
当時は日本のFENの毎週日曜日の"Country Top 40" でもアラバマは頻繁に掛かっており、なかなか粋の良いバンドだなと感じていた。
ウィキペディアによると、カントリー・ミュージック界でバンドがこれほどの成功を収めたのはアラバマが最初とのこと、カントリー・ロックの時代を横目で見てきたのであろう、エレキギターサウンドを前面に押し出し、3パートのハーモニー・ボーカルも完璧な、"生まれるべくして生まれた" サウンドと感じていた。
 今回紹介する "Roll On" だが、仕事で1985年に米国は冬のアラスカに出張した折、現地のFM局から流れるのを連日聴かされていたもので、帰国してから早速、渋谷のタワー・レコードで手に入れた次第である。

 1973年に日本で公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画、"激突"で初めて米国のトラック野郎の存在を知ったものだが、アラスカで初めて見た18輪トレーラーには威厳を感じてしまった。
どんな男が転がしているのか知りたくて観察していたのだが、Byrdsの創設メンバーで、後にカントリー・ロックで活躍した
クリス・ヒルマンのような男だった。
パーマをかけ、口ひげを蓄えた、"マルボロ"や"キャメル"の広告に登場するようなガテン系と言ったら良いだろうか。
菅原文太とはエライ違いだなあと言うのが素直な実感である。
 カントリー・ミュージック界でもトラック野郎を題材にした曲が一つのジャンルになっているところも、日本の演歌界とは違うようで、向こうには向こうの"粋"の世界があるようである。
"Six Days On The Road" を聴けばトレーラーで一家を養う男たちの気質は日本も同じように感じるが、違うのはアメリカ大陸を6〜7日かけて横断するようなスケールであろうか?
"Kenworth" や "Peterbilt" と言った老舗のトラックキャブは寝泊りできる完璧なベッドルームを備えており、日本のトラックの簡易ベッドとは雲泥の差である。
ベッドルームを持たない場合、モーテルを連泊するようだが、悪天候でフリーウェイに閉じこめられた場合を考えるとベッドルーム付きは保険のようなものだろうか? トラック・ストップで食料を調達しておけば冷蔵庫もあるので安心であろう。

 さて、この "Roll On" だが、歌詞を追っていくとそうした緊急事態が起きたことが判り、とても興味を惹かれた次第である。 最後にはちょっと落涙してしまいそうになった。
"jackknifed rig" なる単語が出てくるが、これはトレーラが良く起こす事故の形態で、牽引約のトラックが進行方向とは逆にトレーラの連結部分を軸に90度以下に折れ曲がってしまう状態である。 下手をすると重量のあるトレーラがトラックを引きずりまわしてしまう格好になると非常に危険である。

"Roll On Eighteen-wheeler"

Chorus:
回れ、ハイウェイを
回れ、父さん帰ってくるまで
回れ、一家のため、仲間のため
回れ、母さん頼んだぞ
回れ、18輪

月曜の朝、父さんは母さんにお別れのキッス
トラックによじ登り、太陽と一緒に出かけた
彼は18輪トレーラーを運転する
今回は中西部への仕事だ
母さんにまとわりつく三つの悲しげな顔が尋ねる
ねえ、今度いつ帰ってくるの?
父さんは18輪トレーラーを運転するんだ
父さんが行ってしまえば、みんな寂しい
でも、毎晩、電話をくれて
みんな、愛してるよ
この唄を歌いなさいって

Chorus:
回れ、ハイウェイを
回れ、父さん帰ってくるまで
回れ、一家のため、仲間のため
回れ、母さん頼んだぞ
回れ、18輪

水曜の晩、母さんは電話を待っていた
ベルが鳴ったが、父さんの声じゃなかった
ハイウェイ・パトロールの声らしく、ジャックナイフ状態のトレーラーを発見したと
イリノイ州の雪だまりで
ドライバーの姿は無かった
天候が回復せず捜索は中断
彼らは周辺の家、モーテルも探し回った
新しい情報が入ったと電話があれば
彼を見つけたら伝えて欲しい、愛しているからと
母さんは受話器を手に口ずさんでいた

Chorus:
回れ、ハイウェイを
回れ、父さん帰ってくるまで
回れ、一家のため、仲間のため
回れ、母さん頼んだぞ
回れ、18輪

母さんと子供たちは夜通し電話を待っていた
電話のベルが鳴れば悪い知らせしか思い浮かばなかった
しかし、二階の男が聴いていた
母さんが、どうか父さんを連れて帰って欲しいと願う声を
そしてかかってきた電話の相手は父さんだった
父さんは母さんに頼んだ、あれ歌ってごらん

Chorus:
回れ、ハイウェイを
回れ、父さん帰ってくるまで
回れ、一家のため、仲間のため
回れ、母さん頼んだぞ
回れ、18輪

written by Loggins David Allen
from "Roll On"

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