2011.1.2
年頭所感:ブックエンド

 冬の休日はパソコン仕事が多くなり、朝からiTunesをシャッフルしっぱなしというのがほぼ日(週)課になっている。この正月休みもうちのiMacは黙々とシャッフルしてくれる。
シャッフルの楽しみは何と言っても曲が変わる時の印象の落差であろう。想像もしていなかったような新鮮な組み合わせに驚いたりする。あるいは、思いがけずに街でばったりと旧友に巡り合うような感覚といったらよいだろうか。その曲を聴いていた頃の記憶が蘇り、懐かしさやせつなさが胸のあたりに寄せてくる。
しかしながら、いつも ”それはないだろ!!” という思いにかられる時がある。それはサイモン&ガーファンクルのアルバム、Bookendsの短いテーマが流れてきて、さあこれから次のページを開けようという気持ちになっているのに、いきなり違う曲が流れてきた時なのである。
このアルバムは1968年に発表された彼らの5作目で、A面が人生を誕生、青年期、中年期、老後という4期(曲)に凝縮し、短いテーマ曲で挟んだ6曲構成のコンセプトアルバムになっている。あたかも4冊の大きさも厚さも異なる写真帳を小さなブックエンドで挟んだかのような佇まいなのである。
このテーマ曲はポール・サイモンのギターソロで、イントロはギターのみ、エンディングは"Old Friends=旧友"とタイトルされた歌詞があって、”公園のベンチに腰掛けている老人の姿はブックエンドのようだ” というものである。 高校1年の時にこのアルバムを教えてくれたクラスメートが、”この一遍の素晴らしい詩を書いたポール・サイモンはすごい”と力説していたことがつい昨日のことのように思い出される。
ポール・サイモンはアート・ガーファンクルと同じく1941年生まれなので今年70歳を迎える。このアルバムを制作したのが27歳。このような若造がこのような人生を達観したような作品を書けるのか?と、当時は誰もが驚きを禁じ得なかっただろう。彼自身の人生も4曲目を迎え、彼はブックエンドになり得たのだろうか?
さて、我が人生の写真帳にはどんなブックエンドが要るのだろうか?

そう、この作品だけはシャッフルを頑強にはねつけてしまうのである。そんなコンセプトアルバムは永遠の目標なのだが、いつのことやら。

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