2007.10.8
フォークソング2題

 今日は10月に入って体育の日にからんだ3連休。 最終日は久しぶりの雨の休日。朝からパソコンで音楽をシャッフルで流しっぱなしにしていた。サイモン&ガーファンクル(S&G)の"7時のニュース・きよしこの夜"が流れてきた。何度となく聴いたことはあるのだが、今日、「あーそうだったのか」と思った。
フォークソングには古くから時事ネタを扱った曲が多く在る。フォークソングは次世代に歌い継がれるという性質上、フォークシンガー達は忘れてはならない事件を詩とメロディーに託したようだ。このS&Gの曲はきよしこの夜をバックに7時のニュースのアナウンサーの声が流れてくる。このニュースに登場するのは、時のジョンソン大統領、コメディアンのレニー・ブルース、暗殺される前のキング牧師、ニクソン副大統領と言ったところである。特に忘れられないような大事件の内容ではないし、ニュースのアナウンスは口ずさむことはできないのだが、こういう「事実の残し方」もあるのかと思った次第である。この曲は1966年のポール・サイモンの作品*1だが、テープレコーダーという当時の最新技術を使って時代の断片を切り取って挿入する事でフォークソングのひとつの在り方を示そうとしたのではと思った次第である。

 そんな思いに触発されてもう一曲、思い出した。ザ・バーズが1969年に発表した"Ballad Of Easy Rider" *2というアルバムの最後に収められている"Armstrong, Aldrin and collins"という曲である。宇宙飛行船アポロ11号による人類初の月面着陸に挑んだ3宇宙飛行士の名前をタイトルにしたもので、あたかも19世紀のマウンテンソング風にシンプルなコードでアコースティックギター1本で歌われている。ただ、ロジャー・マッギンはカウントダウンに続くロケット発射音を効果音として用い、バックにシンセサイザーの無機的な音を控えめに添えることで20世紀のフォークソングであることの証としたようだ。

 さて、では21世紀のフォークソングはどんな事件を歌っているだろうか? 2001年の9・1・1事件、イラク戦争など、複数のシンガーが題材にしているようだが、18〜19世紀の古いフォークソングが身近で起きた事実を「むかし、むかし....」と淡々と歌っていたのと比べると、あまりにも世界を揺るがすような大きな事件ばかりで、しかも歌う本人の心情がもろに表に出てきている。こうしたタイプの曲は末永く歌い継がれることができるだろうか? 情報過密でデジタル技術でいとも簡単に事件を辿れる現代では、もはやフォークソングの時事ネタはその役割をインターネットに譲ってしまったのだろうか?

*1:"PARSLEY,SAGE,ROSEMARY AND THYME"1966

*2:"BALLAD OF EASY RIDER"1969

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