4.戦車(巡航戦車・歩兵戦車)

クルセイダー巡航戦車系列

 ノルマンディー上陸の頃にはすっかり時代遅れとなり、戦車としては使われていないが、対空戦車トラクターのベースとなって生き長らえていた。対空戦車はエリコン、ポールステンの20mm機関砲を搭載したタイプとボフォース40mm砲を積んだタイプとがあり、前者の方はVPから砲塔改造セットが発売されている。AA MkIIというタイプなのだが、どうも実戦では使われいないようだ。実戦使用されたMk IIIの改造キットがアキュリットからつい先日発売なっている。ボフォース砲搭載型(AA Mk I)はアキュリットが発売をアナウンスしているが、正規の予定は不明である。トラクターの改造キットもアキュリットアーマーから発売されており、イタレリの傑作キットをベースに製作するようになっている。レジン製であるが、その成形状態などは素晴らしく、以前の「とても組めそうにない」品質とは隔絶した好パーツである。

クロムウエル巡航戦車系列

  基本的には装甲偵察連隊で使用されたが、第7機甲師団のみ戦車旅団もこの戦車を装備した。1944年から実戦に投入された割には装甲・火力ともに貧弱であるが、その開発に時間がかかったので仕方ない部分ではある。
(それが英国の戦車開発の一番の問題点なのだが)

 キットはアキュリットおよびクロムウエルのレジンキット、タミヤのインジェクションキットが出ているが、今となっては前2社のレジン製キットを選ぶ理由はほとんどないだろう。タミヤのキットは大変よく出来ていてお勧めである。なお、クロムエルは各部がさまざまに変化している(エンジンデッキ、ドライバーずハッチ等)が、それをフォローするためのレジン製改造キットがアキュリットアーマーから多数発売になっている。とはいえ、インジェクションキットにレジンパーツを付加するというのは収縮の問題などもあり、かなり難しいのではないかと思う。

セントー巡航戦車系列

セントーMk IV

(ギャラリーに完成品写真あり)

 王立海兵隊の機甲支援連隊で使用されたセントーMkIVのキットがタミヤから発売されるとは思わなかった・・・。発売以前にアキュリットの改造パーツ(砲身他、転輪、デカール)を使用して製作してしまったので、そちらは購入しなかった。そのタミヤのキットで「ダークアースで塗られた」セントーが当たり前になってしまったのが、なんとも不思議な感じではある。

セントードーザー

(ギャラリーに完成品写真あり)

 セントーの車体を利用した装甲ドーザー。キットはクロムウエルからレジン製フルキット、アキュリットアーマーから改造キット(以前はフルキットだったが、最近タミヤのクロムウエル用としてリニューアルされた)が発売されている。クロムウエルのキットは一回り小さい仕上がりだが、単体で見る限りはそう違和感もない。部品点数も少なく、超絶的な抜きを駆使した一体成型が多用されており、大変組みやすいキットとなっている。

セントー AA

 自走砲の項、参照のこと

チャレンジャー巡航戦車

(ギャラリーに完成品写真あり)

 クロムウエルの車体を延長し、装甲を薄くした車体にTOGを原型とする砲塔を無理やり積みこんだ、いかにもアンバランスな味のある戦車である。巡航戦車に分類はされているが、どちらかというと戦車駆逐車に近い車両といえよう。キットはアキュリットアーマーから発売されており、大変よく出来たキットである。欠点としては転輪などがメタルで成形されており、組みたて時に補強を入れておかないとならないことがあげられる。それさえクリアすれば、独特のプロポーションを完璧に再現した素晴らしい完成品が手に入るので、お薦めである。
(なお、メタルの足回りゆえ、大変に重いので組みたて途中(いわんや完成後は)に落としたら目も当てられないので要注意のこと)

コメット巡航戦車

 クロムウエル戦車の車体を利用し17ポンド砲を搭載する計画であったが、実際に完成した物はだいぶ違っているあたりがイギリス的で大変に面白い。「センチュリオンのご先祖様」といった雰囲気もあり、英国戦車らしさに溢れているとも言えるだろう。キットはアキュリットアーマーからレジンキットが発売されているが、未所有のため詳しくは触れられない。ICMから発売のアナウンスはあったが、進捗状況は不明である。インジェクション化されるのは嬉しいが、ちょっと出来に不安がある。見目よくするためにはタミヤのクロムウエルやアキュリットのトラックパックスシリーズの15.5インチ履帯が必要になるのではなかろうか?

センチュリオン(A41)巡航戦車

 それまでの苦労が実ったのか、戦後数十年にも渡って現役をはれる素晴らしい戦車が完成したのは英国にとっては喜ばしいことだっただろう。それが戦争に間に合わなかったのは、ある意味では不幸ではあろうが・・・。

 キットはタミヤからインジェクションで発売されている(最近再販になった)が、こちらは戦後のMk IIIである。1971年頃のキットではあるが出来は大変に素晴らしい。なんとか戦争に間に合った(と言えるだろうか?)増加試作型はアキュリットアーマーからレジンキットとして発売されている。大変高額なキットであり、万人にお薦め出来るワケではないが、出来の方は最近のスタンダードになっているのではないだろうか?
(値段が高かったので購入に踏み切れなかった。戦時中の車両といい切れない部分もあったし・・・)

チャーチル歩兵戦車系列

チャーチル Mk V

 Mk IVの車体に95mm砲を搭載した支援タイプとしてレジキャストから発売されている。出来はいつものレジキャストタッチで部品段階で見る限りでは素晴らしく見えるが、実際に組もうとすると地獄を見るような気がする。砲部分を6ポンド砲に換装すればMk IV、75mm砲にすればMk VIとして完成させることが出来るので、イギリス戦車ファンとしては1台は手元において置きたいキットである。値段的にかなり高いので、購入には覚悟が必要ではあるが・・・。

チャーチル Mk VII

 かつてはクロコダイル火炎放射戦車として発売されていたが、関連部品をオミットすることでMk Zとしてリニューアル再販された。20年以上前のキットなのにその水準は今の眼で見ても全く見劣りしないのはたいしたものである。新たに添付されたフィギュアの出来もよく、お薦めのキットと言えよう。

バレンタイン歩兵戦車

 英軍戦車としてはもっとも大量に生産されたのが、この戦車である。ある意味では大変に不幸なことだったと思えるが、それが現実というモノであろう。北西ヨーロッパにおいては75mm砲を搭載したMk XIが一部対戦車砲連隊の指揮戦車として使用されている。キットはマケットからインジェクションキットが発売されているが、出来の方はあまり芳しくない。各部に間違いがあるのはまだしも、「模型として」の完成度が低いのは問題だろう。東欧・ロシアのキットとしては当たり前なのかも知れないが。アキュリットがずいぶん前からアナウンスしているが、全く進捗していないようだ。インジェクションキットが発売されてしまった今となっては望み薄かもしれない。

スチュアート軽戦車

 北アフリカでは大量に使用されたが、北西ヨーロッパにおいてもしぶとく生き残っている。車体形状が変更されたM3A3が多いようだが、旧式とも言えるM3A1も使われていた。M3A1のキットはタミヤから、M3A3はレジンのフルキットが香港のターゲットモデルから、車体改造キットがハーパーキャスティング(絶版)、ADV/Azimut、クロムウエル、アキュリットアーマーから発売されている。現状ではターゲットモデルとアキュリットアーマーの物が比較的入手しやすいだろう。

 タミヤのキットは25年ほど前の発売で、実戦でほとんど使用されなかったディーゼルエンジン搭載タイプとなっている。実車取材の都合でこうなった(使われなかったので残っていたということ)とはいえ、あまり一般的とは言えない形式を模型化してしまったのはどうかと思う。出来の方は今の目で見てもそう悪くはないが、一般的なタイプにするにはエンジンデッキ周りの改造が必要だし、キャタピラは換装しなければならず、それなりに手を加えなくてはならないのは問題がある。各種エッチングパーツでのディティールアップとAFVクラブの連結式インジェクションキャタピラは必須であろう。

 最近になってアキュリットアーマーからM3A1改造キットが発売された。インテリアも完全に再現された大変素晴らしいキットである。大戦後半に使用されたタイプを作るなら、これを使うのがベストだろう。

シャーマン中戦車(ファイヤフライ)

 自国で17ポンド砲搭載戦車をロクに作れなかったのに、シャーマンなら砲の換装だけというお手軽な方法で極めて強力な打撃力を持った戦車が完成してしまった、というのは英国の戦車技術者にとっては悲しいことだったろうと思える。

 キットはドラゴンから長車体のMk Vcとハイブリッド車体のMk Icがインジェクションキットとして発売されているが、出来の方は手放しでお薦めできるほどのものではない。各種レジンキットやMPのインジェクション改造車体を使ってやった方が見目のよい物が完成する。

テトラーク空挺戦車

 最初はMk IV軽戦車の後継として開発されたが、完成した時にはすでに活躍できる余地はなく、空挺部隊に拾われたという悲しい来歴がある。当時のグライダーで搬送出来るという意味では使い勝手はよかったのだろうが・・・。

 キットはアキュリットアーマーからレジン製フルキットが発売されており、この小さな軽戦車を大変によく再現している。大きさの割りには多少高いが、とりあえずはお薦め出来るキットである。

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