喫煙により発症のリスクが増大すると考えられる疾患を喫煙関連疾患と呼んでいます。
喫煙の害というと、肺癌と考える方が多いと思います。しかし、肺がん以外にも口腔癌、喉頭癌、食道癌、胃癌など、多くの癌のリスクを高めています。
また、癌以外にも循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、精神疾患、産婦人科疾患、代謝疾患など身体のあらゆる部位の疾患に影響しています。
二コチンにより、心拍数の増加、血圧上昇、末梢血管の収縮などがおこり、循環器疾患の引き金になります。心筋梗塞などの虚血性心疾患発生率の研究では、1日20本をこえる喫煙者は非喫煙者に比べ3.2倍という報告があります。
喫煙する妊婦は低体重児の出生、早産などの頻度が高いこともわかっています。また、喫煙は身体の免疫力を低下させ、老化を促進するといわれています。このほか、喫煙者は自覚していなくても、吐き気や咳、頭痛などの原因になっていますし、疾患の原因だけでなく、それをより増悪させる働きもあることを忘れてはなりません。
癌 | 喉頭癌:33倍,肺癌:5倍,食道癌:2倍 |
呼吸器疾患 | 肺気腫,慢性気管支炎,喘息 |
循嫌器疾患 | 狭心症,心筋梗塞,高血圧症,動脈硬化,末梢楯環不全 |
消化器疾患 | 胃・十二指腸潰瘍,逆流性食道炎 |
精神疾患 | ニコチン依存症 |
産婚人科疾患 | 早産,流産,周産期死亡,先天奇形 |
代謝疾患 | 糖尿病,骨粗鬆症 |
神経疾患 | 脳梗塞,脳萎縮,パーキンソン病,聴力障害 |
歯料疾患 | 歯周炎,ロ内炎,口臭 |
その他にも、免疫機能低下により、アレルギー性疾患をひきおこしたり、創傷治癒の遅延をきたしたりもします。また、低酸素による運動能力の低下、血管収縮・ビタミンC破壊による皮膚温低下やしわの増加など美容にも悪影響をおよぼします。寝たきり状態の促進もいわれています。
たばこの煙の急性影響として、気管支平滑筋を収縮させる作用がある。たばこl本の喫煙による気道抵抗の上昇から回復するのに20分以上の時間を要することが報告されている。
喫煙本数が増えるほど、咳、痰などの症状がでやすくなることは明らかで、喫煙が慢性気管支炎、肺気腫などの呼吸困難を伴なう慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因になっていることは疑う余地がないといわれている。たばこの煙に含まれる窒素酸化物やアルデヒドなどのさまざまな刺激物質の慢性的な作用がこうした症状をもたらすと考えられている。
戦前、肺結核は国民病といわれたが、現在は死亡順位の10位以内にも入っていない。これとは対照的に、戦後、日本において急散に死亡率が増加して間題となっているのが肺癌である。肺癌は喫煙と最も関連の強い疾患と考えられており、喫煙と肺癌の関連性をうかがわせる膨大なデータが積み重ねられている。
また、世界各国から受動喫煙により肺がん死亡リスクの高まることを示す研究報告も相次いでおり、家庭内はもとより職場等における受動喫煙が間題になっている。
たばこが燃えると必ず一酸化炭素が発生する。
肺から取り込まれた酸素は、血液中のへモグロピンと結びついて全身に運ばれるが、一酸化炭素はこのヘモグロビンとの結合が酸素よりも240倍も強いためにヘモグロピンを先取りして酸素の運搬を妨害し全身的な酸素不足を起こす。ニコチンやタールはフィルターである程度除去できるが、一酸化炭索はどんなフィルターも通り抜けてしまう。
喫煙直後の心臓や血管の変化を調べた結果、血圧は収縮期血圧・拡張期血圧ともに上昇する。心拍数も急激に上昇する。そして、血管収縮の結果手足の皮膚温度は低下する。
これは、若者が10kgの荷物を下げて歩くのに相当する負担になり、「一服」からはほどとおいことが分かる。
循環器疾患の中で、喫煙と最も関連が強いと考えられているのが、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患である。虚血性心疾患は、心臓自身に血液を補給している冠動脈の内腔が狭窄してしまうために起こるが、喫煙習憤は動脈硬化を促進させ、血管を収縮させる。たばこの煙の有害物質のうち動脈硬化を起こす主犯は一酸化炭素であると考えられている。
喫煙習慣に高コレステロール血症や高血圧が重なると、さらに虚血性心疾患が起こりやすくなることから、これらを虚血性心疾患の3大危険因子と呼んでいる。
最近は、受動喫煙と虚血性心疾患との関連も明らかにされ、注目を浴びている。
たばこを吸うひとには、胸やけを訴える人が多い。胸やけが起こるのは、胃・食道の括約筋がゆるんで、酸性度の強い胃液が逆流するからである。また、たばこを吸うと、幽門すなわち胃が十二指腸に接する部分の括約筋を弛緩させることが証明されており、喫煙によって十二指腸液の胃内への逆流が起こるものと推測される。とくに1日30本以上のヘビースモーカーでは、胃内逆流の例が非喫煙者よりもはるかに多いという報告がある。
胃粘膜には毛細血管がはりめぐらされており、この血流が障害を受けると胃潰瘍にかかりやすくなる。わずか3服の喫煙によって常習喫煙者で約20%、非喫煙者では50〜70%もの血液量の低下がみられる。一服のたびに起こるこうした血行障害は、粘膜の防御力を抵下させて潰瘍を誘発する。
喫煙者は非喫煙者にくらべて消化性潰瘍にかかりやすく、喫煙本数が多いほど死亡率が高いという調査報告がある。また、喫煙は消化性潰瘍の治療効果を低下させたり、再発を増加させたりすることが分かっている。禁煙できなかった人の胃・十二指腸潰瘍再発率は約50%と、禁煙した人の約20%にくらべてはるかに高率であることが報告されている。
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