2015.1.10
音のエッセイ その1:”チンモチ” とはなにか?

 台所にて。

私:今朝、なに食べる?
相方:チンモチにする?
私:いや、普通のでいい....

 お判りの方もいらっしゃるかもしれないが、チンモチとはレンジで温めたお餅のことである。
レンジでお餅を温めると狐色に焼けるのではなく全体が均一に柔らかくなるので、ピザ風のとろけたチーズのようになるのである。
正月にこれをやったときに、お皿の上に直にお餅を置いてレンジに入れてしまったために、きれいにとろけたのはよかったのだが、お皿にこびりついてしまったので、今朝は普通の狐色に焼いたお餅にしようと思った次第である。
ところで、このやりとりを聞いていた娘の反応がおもしろい。
我が家では普段、お餅を焼くのはトースターを使うのだが、娘はチンモチと聞いてトースターで焼くものと思ったとのこと。
娘曰く、だってトースターは "チン" って鳴るけど、レンジは "ピー" でしょ。

 このチンモチ事件は、双対問題を含んでいると思った次第である。
”チンする” は現代の日常会話で通じており、チンはレンジを意味するという論理が出来上がっている。これは脳の中では左脳課題ということである。
一方、”トースターはチン” というのはどう聴こえるかということであって、言語ではなく音響、すなわち右脳課題ということである。
であるから、”判ったわ、じゃあ私がチンモチ作ってあげる” を相方が言うのと、娘が言うのでは結果は大違いなのである。
”これが言葉の伝達効率というもので、意図が正しく伝わるとは限らない。良く覚えておくように”
と、娘に言ったのだが、どのぐらいの伝達効率で伝わっただろうか?

 ヘイトスピーチや民族紛争も、こうした言語の伝達効率がきっかけになっているように思った次第である。
ただ、伝達効率と表現するとマイナスなイメージを内包しているが、幾分かの ”ゆらぎ” が残されているからこそ文学、音楽、美術の類いが息づくことができるのではないだろうか?
宇宙に漂うエネルギーの由来はここから?
エネルギーは増えも減りもしない=保存則に従い、紛争はゆらぎによって生まれ、ゆらぎによって癒される=輪廻転生。

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