2003.6.2
黄金律
音律には純正律、平均律、ピタゴラス律等の他、それぞれの民族音楽固有の様々な音律がある。 いずれもオクターブの間を人間がいろいろな都合を考えて分割したものである。
ピタゴラス律は周波数比率で1:1.5=いわゆる完全5度という関係を使って。 純正律は倍音を使って。 平均律は元の周波数に2の12乗根をかけて隣の周波数を決め、12回掛けると2倍=オクターブになるようにしたものである。
以前のESSAYでも触れたが、自然界には黄金比というものがある。1:1.61803・・・という比率で、縦横比がこの比率は視覚的に安定した美観を与え、木の枝の出方や、バラの花びらの重なり方など、生命の成長の仕組みもこの黄金比と関係していると言われている。いわば自然界に備わった比率であることから神の比率とも言われている。
この比率を数学的に発見したのはピタゴラスの弟子エウドクソスと言われており、以後、人間はさまざまな歴史的建造物や生物の形などに黄金比が見られることを発見してきた。
さて、この黄金比で音律を作ってみた。 ピタゴラス律と同じやり方で、元の周波数に1.5ではなく1.61803・・・を掛けていき、オクターブの中に戻してゆく。
以下にその結果を示した。 おもしろいのは一回掛けるとピタゴラス律ではドに対して完全5度のソになるが、黄金律ではソ#に近いことだ。
なお、ピタゴラス律が1.5を何回掛けてもぴったり2の倍数は得られないのと同様に1.61803・・・をいくら掛けても2の倍数は得られない。
分りやすいようにドを周波数1、そのオクターブ上を2として各音名の周波数の比率で表した。
| 純正律 | 平均律 | ピタゴラス律 1.5=P | 黄金律 1.61803=G |
ド | 2 | 2 | 2 | 2 |
シ | 1.9 | 1.888 | 1.898 =(P^5)/4 | 1.936 =(G^7)/15 |
ラ# | 1.8 | 1.782 | 1.802 =(P^10)/32 | 1.794 =(G^6)/10 |
ラ | 1.7 | 1.682 | 1.688 =(P^3)/2 | 1.714 =(G^4)/4 |
ソ# | 1.6 | 1.587 | 1.602 =(P^8)/16 | 1.618 =(G^1) |
ソ | 1.5 | 1.498 | 1.5 =(P^1) | 1.495 =(G^6)/12 |
ファ# | 1.4 | 1.414 | 1.424 =(P^6)/8 | 1.412 =(G^3)/3 |
ファ | 1.3 | 1.335 | 1.352 =(P^11)/64 | 1.309 =(G^2)/2 |
ミ | 1.25 | 1.260 | 1.266 =(P^4)/4 | 1.232 =(G^5)/9 |
レ# | 1.2 | 1.189 | 1.201 =(P^9)/32 | 1.196 =(G^6)/15 |
レ | 1.15 | 1.122 | 1.125 =(P^2)/2 | 1.142 =(G^4)/6 |
ド# | 1.05 | 1.059 | 1.068 =(P^7)/16 | 1.059 =(G^3)/4 |
ド | 1 | 1 | 1 | 1 |
オクターブの間で音律を決めるにはかならずしも1:1.5でなくとも良いわけだが、せっかく神の比率があるのならそれを利用するのもいいのではないかと思った次第である。ピタゴラスも弟子が黄金比を見つけたのを見て、おそらくおなじことを試みたのではないだろうか?「神の比率も素晴らしいが、やっぱり1:1.5という単純さも美しい!!」と自画自賛しただろうか?
さて、黄金比は視覚的に美感を覚えると言うが、この黄金律に人体はどう反応するのだろうか? 無理矢理オクターブの中に詰め込んでしまったのを見て神は、「黄金比をおもちゃにするでない!!」と怒っているだろうか?
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