2010.11.14
珈琲を煎れる その2 西部開拓編

 前回の珈琲豆挽きに続き、相方が今度はパーコレーターなるものを買ってきた。
自分は全く珈琲道具には疎いのだが、相方の説明によるとアウトドアで珈琲を煎れるための道具だそうで、濾紙を使わず、中でお湯が噴水のように挽いた珈琲豆に降り注ぐポットだそうだ。なんでもフランスで生まれてアメリカの西部開拓時代に普及したとのこと。 それを聞いて、あっ、そうだったのか!と、また嬉しい発見をしてしまった。
ピーター・フォンダ監督、主演の西部劇 "The Hired Hand" 邦題 ”さすらいのカウボーイ”の冒頭にこんなシーンがある。 放浪の旅を続ける3人の男が川のほとりで魚を釣り、昼飯にするのだが、焚き火の陽炎にゆらめく珈琲ポットが大写しになり、

若い男(ロバート・プラット):「ぺっ、こんなまずい珈琲はもう沢山だ!」
中年男(ウォーレン・オーツ):「デル ノルテの街で新しい豆を仕入れよう」
真ん中の主人公(ピーター・フォンダ):「.......」

自分達が望んで放浪の旅をしているのだが、毎日同じ事の繰り返しにうんざりといった雰囲気がよく出ているし、西部開拓時代の野営の様子を伺い知れるシーンなのである。 今、初めて判ったのが、このポットがパーコレーターだったのである。 映画の小道具とは言え、吹きこぼれの白い痕跡が、面白いことも面倒なことも分かち合ってきた3人の旅を物語っているようで、この映画の中の印象的なシーンだ。
映画の中で珈琲を煎れるシーンは山ほどありそうだが、それぞれの登場人物の置かれたシチュエーションをうまく表現するのに監督はこだわったのだろう。 注:デル ノルテはニューメキシコの小さな街

相方に、なんでパーコレータを買ってきたのか聞いてみたら、「好きな漫画にパーコレータで珈琲を煎れるシーンが良く出てくるのよ」とのこと。それは石塚真一作の「岳」という山岳救助隊の山男が主人公の物語で、単行本を見せてくれた。頁をめくってゆくとなるほどそのとおりである。
ああ今度、山でパーコレータで珈琲を煎れてみたくなってきた!
そしてその時のセリフは、
「.......」。

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