ぼろぼろギターの復活大作戦!
見放されそうになったかわいそうなギターを預かり,現役復帰させるまでのメンテナンス奮闘記。
Last Update:
25.Nov.2000
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「どうしょうもないギターがあるんだけど,捨てるのももったいないからなんとかならないだろうか?」と知人から預かったストラトキャスター(コピーモデル)。友人から譲ってもらったギターなのだそうですが,とにかくコンディションが悪い。ネックの反りは当然,ボディーやパーツもボロボロ。また,ピックアップの増設をはじめ数々の改造が施されているのですが,その加工も実に雑でいいかげんなシロモノです。

しかもピックガードを外してびっくり!改造スペースを確保するためにボディを削ったのでしょうが,ドリルの穴が無数に空き,いくつかはボディを貫通!彫刻刀かノミで削ったと思われる断面はささくれだっています。内部配線はほとんどすべてのハンダ付け部分がちぎれかかっており,配線のビニール被覆はハンダごてで溶けた跡。ポット,スイッチ類はホコリと錆にまみれて,このままではとてもまともな音が出るとは思えません。
しかし,細かく見ていくと元々の素性はどうやら悪くなさそう。指板やボディの材質もまともでしっかり作られていことは救いになりそうです。
「よし,どこまで復活できるかわからないけど,チャレンジしてみよう!」。とりあえずパーツを外し,バラバラにしてみました。使えるパーツとだめそうなパーツにより分けていきます。とはいえ,持主にしてみれば元々処分するつもりだったギターなのでそんなに費用はかけられません。電気部品は余分なハンダを落とし,接点復活剤や防錆剤を使って洗浄。金属パーツ類もメッキクリーナや超音波洗浄器で可能な限り磨き上げました。交換が必要な部品をリストアップ。今回は他に購入したい工具もあったので,アメリカのギターパーツショップ・"Stewart Macdonald's Guitar Shop Supply"に国際電話でFAX注文することにしました。
パーツが到着するまでの間はガリガリにえぐられたボディ内部の修理。ささくれ立ってる部分や,中途半端に削られた部分を彫刻刀とサンドペーパーで整形していきます。えぐられた部分やドリルで開けられた穴には木工用のパテを塗り込みます。

パテの乾燥を待つこと半日。その後内部をざっとサンドペーパーがけ。見える部分じゃないので車の板金のパテ埋め作業のように美しく仕上げる必要はありませんが,せめて今までよりはきれいにしようじゃないですか。
さて,サンディングの後は特別大サービス!特にストラトは弱いと言われている外来ノイズの防止策として,内部に導電塗料を塗りたくっちゃいました。ここまでやってるストラトはそうそうありませんぜ,ダンナ。ま,副産物としてちょうどいい「パテ埋めのボロ隠し」にもなりましたが(苦笑)。
導電塗料の乾燥にはまる1日かかります。この間にフレットと指板の調整をすることにしました。まずは部分的に減っているフレットの高さを均します。ここで活躍するのがフレットレベラーと呼ばれる,木片にヤスリが取り付けられた工具(右写真上参照)。以前,スキー板のメンテナンスに凝っていた私にはなんとなくエッジシャープナーを思い出させる一品です。これで荒削りしたのち,荒さの異なるサンドペーパーで段階的に整えてゆき,最後にコンパウンドでピカピカに磨き上げます。続いては指板。こちらもサンドペーパーで研磨し,仕上げはレモンオイルでつや出し。
さあ,今度は内部配線にかかります。ストラトキャスターの場合,ほとんどの電装パーツをピックガードに取り付けた状態で配線していくので作業自体は楽です。今回,洗浄の結果まだ使えそうだったポットやスイッチ,ピックアップはそのまま流用し,傷や改造痕でボロボロだったピックガードはそっくり新品に替えることにしました。シールド線やビニール線といった配線材についてもすべて新しいものに交換。適正な長さで見た目にもすっきりした配線を目指しました。ハンダ付けは,通常の接続部分には20Wのセラミックヒータ式のハンダごて,ポットのケース等大物への接続には加熱が速く熱容量の大きいガス式ハンダごてを使い分けています。
ここまできたらあとは組立て。ピクガード,トレモロユニット,ネック,ペグ等を元どおりに戻してほぼ完成です。が,最も重要な作業が残っていました。ネックの反りとピックアップ高さ,そして弦高,オクターブピッチといった各部の調整です。具体的作業はベースと同じですが,弦の張力や太さがまったく異なるのでベースを調整するときのの感覚があまり通用しません。特にストラトのネック反り調整は弦を外した状態でしかできないので,弦の張力分だけ逆反り気味にする必要があのですが,ベースほどの張力はかからないのでこのあたりの勘が難しいところです。今回はとりあえずほぼまっすぐな状態に調整しました。2,3日したら再調整が必要かもしれません。ピックアップ高さや弦高については実際に弾いてみながら微調整していきました。このあたりは数値的な調整というより,現実的な弾きやすさと音色を重視するべき部分です。オクターブピッチは,特にギターの場合はベースよりはるかにハイポジションの使用頻度が高いのでチューニングメーターでかなりシビアに調整しました。
最後にボディーと金属パーツをもう一度磨き上げ,完成!どうです,見違えるようになったでしょ(と言っても作業前の写真を撮りそびれたのでわからないでしょうが)。
しかし,これを見てると自分のレスポールももう一度手直ししてやりたくなりますねぇ・・・。
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