このコーナーでは毎度おなじみのギタリスト・Ｓ氏よりまたもや修理の依頼。今回はウォークマンに使うステレオイヤホンです。よくありがちですが，片方だけ聞こえなくなったという故障。「高いものじゃないんだから買い換えろよ」という声も聞かれそうですが，本人曰く「とても耳にフィットするのであきらめきれないし，同じ形のはもう売ってない」とのこと。

こういうこだわり，私は大好きなんですよねぇ(^_^)。これはもう直さずにはいられません。さっそく原因の追求にかかりました。
片方だけ聞こえないというケースでもっとも多いのはイヤホン側の問題ではなく，ウォークマン本体のジャック側の接触不良です。しかし，試しに手元の通勤用ポケットラジオにつないでみたところ今回はそうではないようです。やはり片側が聞こえません。そうなると次に疑うべくは断線。
ラジオにつないだままでイヤホンコードを端から揺すってみます。「ブツブツ！」ちょうどコードが左右に分岐する部分を揺すったとき，わずかながらラジオの音が聞こえてきました。どうやらここで断線しているようです。
思い切って聞こえない方のイヤホンのコードを分岐部分で切断。切ったコードの端に，手元に転がっていた使い古しの乾電池を接触させてみました。「ブツブツ」イヤホンからノイズが聞こえてきたことから分岐部分以降は正常と判断。問題の分岐内部の断線部分の接続作業にかかりました。

まち針とカッターナイフで分岐部分をバラし，ビニール被覆をはぎ取って断線している部分を確認。髪の毛より細いより線数本が確かにちぎれています。断線部分よりさらに数ミリ被覆をはがし，いよいよイヤホン側のコード端末とのハンダ付けにかかりました。しかし，なにしろ細い線です。目をショボショボさせながら芯線を寄り合わせ，必要最小限のハンダで接続。あとは最初にはずした分岐部の保護カバー内に接続部分がきれいに収まるようサイズと形を整えて元どおりに戻し，無事完了しました。

なんでも使い捨ての時代とはいえ，愛着のあるモノっていうのは壊れたからってなかなかあきらめがつかないものです。「そんなときこそ直して使う」という修理の意義みたいなものを今回はあらためて実感しました。