カラオケイヤホンの謎
jul.2000
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今回持ち込まれたのはポータブルMDプレーヤー用のステレオイヤホン。これが一風変わった故障で,歌モノのMDを聴くとボーカルが消えてカラオケになってしまうというもの。初めて経験した人には実に摩訶不思議な現象ですよね。
しかし今回は,以前「疑似カラオケマシン」なるモノを作った経験から一瞬にして原因が推測できました。ボーカルのようにステレオ空間でセンターに定位している音というのはたいてい左右両方のスピーカからまったく同じ波形で出力されています。仮に左右の信号を引き算したらどうなるでしょう?そう,同じ成分であるボーカルがうち消されてしまうんですね。
ということはこのイヤホンの配線のどこかにその引き算が起こるような異変があるわけです。ステレオコンポをお持ちの方はちょっと実験してみてください。アンプの裏側に接続されているスピーカ配線左右それぞれ2本ずつのうち,ー端子(たいてい黒い端子)につないである配線を左右とも外します。そして外した左右の線同士をつないで音楽を聴いてみましょう。ほら,カラオケになったでしょう!つまり,スピーカのアース側がアンプから浮いてしまうとこのようなことが起こるのです。
疑うべくはイヤホンの根本です。このイヤホンは配線途中にリモコンがついているのでこの出口部分を疑ってみます。

リモコン部分を分解して,イヤホン配線が接続されるジャック部分を観察してみました。

予想は的中。出力ジャックのアース端子に亀裂が入り,プリント基板のアースから完全に浮いてしまっています(写真左)。さっそくハンダ付けでつないでしまいましょう。しかし,ジャックがプラスチック製なので短時間で手早く仕上げないと溶けてしまいます。亀裂の入った端子をサンドペーパーで磨き,充分に加熱したハンダごてと細目の糸ハンダで一瞬のうちにハンダ付けしました(写真右)。結果は上々,ボーカルの美しい声も無事ステージ中央に戻り,臨場感あるサウンドがよみがえりました。
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